当記事の3行まとめ
- インドネシアは人口約2億3,800万人・世界第4位の人口大国で、華人は人口の3.5%・約740万人ながら経済の約8割を握っているとされる
- 華人と土着民(プリブミ)との間には数十年単位で繰り返されてきた排華の歴史があり、1998年にも大規模な排華暴動が発生した
- インドネシアと関わるには、マレー系の経済的・社会的不満と、華人の経済的立場と恐れの両方を理解することが出発点になる
マレーシア、シンガポールに続く3カ国目は、インドネシア共和国です。世界第4位の人口、ソーシャルメディア活用の活発さ、そして親日国かつ新興市場として、ますます注目を集めています。
① インドネシアの基本情報
インドネシアは赤道付近に17,000以上の島々が連なる、世界最大の島嶼国です。人口は約2億3,800万人で世界第4位、約490の民族が暮らしており、国土面積は日本の約5倍、東西の長さは5,000km以上で、米国の東海岸から西海岸までの距離に匹敵します。首都はジャワ島のジャカルタで、人口は2,224万人と世界第4位の都市規模です。
民族構成は、ジャワ系、スンダ系、バタッ系などマレー系住民が大多数を占めます。宗教構成はイスラム教が87%と最も多く、プロテスタント6%、カトリック4%、ヒンドゥー教約1%、仏教約1%です。
インドネシアは「多様性の中の統一(Bhinneka Tunggal Ika)」をスローガンに掲げ、国是として「パンチャシラ(サンスクリット語で5つの徳の実践)」を守っています。
- 唯一神への信仰(イスラム以外でもよいが無宗教は認められない)
- 人道主義
- インドネシアの統一
- 民主主義
- インドネシア全国民への社会正義
地方政府は2層構造で、第一レベルが州、その下位に第二レベルとして県と市が置かれています。村も存在しますが、行政権は持たず慣習的なものです。
② インドネシア経済の基盤と日系企業の進出
経済は基本的に農業国であり、2011年のGDPは8,456億ドル・世界第16位ですが、一人当たりGDPは3,508ドルと世界平均の40%に満たない水準です。アジア開発銀行の2011年公表資料によると、1日2ドル未満で暮らす貧困層は約1億1,743万人と、国民のおよそ半数を占めるとされています。
工業では軽工業・食品工業・織物・石油精製が盛んで、コプラ・パーム油のほか、化学繊維・パルプ・窒素肥料などの工業も確立しています。パナソニック、オムロン、ブリヂストンをはじめとする日系企業が、現地子会社や合弁形態で多数進出しています。
③ インドネシアの歴史と日本との関わり
インドと中国を結ぶ中継貿易の拠点として栄えたインドネシアでは、在住のマレー系住民がポルトガル・オランダ・イギリス・日本の支配を経て、民族意識を強めていきました。
第二次世界大戦中、日本はオランダの植民地であったインドネシアの民族自治を承認し、国旗・国歌・軍事訓練を通じて独立を後押しした経緯があります。戦後のオランダとの独立戦争では、日本人約2,000名が現地に残り共に戦い、1949年にインドネシアは独立を勝ち取りました。
その後、マレーシアへの侵攻による国際的批判を経て国際連盟を脱退し、中国との蜜月関係や政権交代を経ながら、共産党を非合法とする一方で中国・ロシア・北朝鮮とも関係を維持し、政治・軍事ともに自国主義を貫いています。
④ インドネシアの華僑・華人——経済の8割を握る最大少数民族
人口の76.5%を占めるムスリムの中で、中国系は3.5%・約740万人と、最大の少数民族にあたります。
同国は海外華人の最大の居住地であり、華人の大部分は都市部に居住しています。ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、ボゴール、メダン、パレンバンといった大都市にはすべてチャイナタウンがあります。インドネシアはイスラム国家ですが、華人のほとんどは仏教・道教・儒教を信仰しています。
華人はインドネシアの富の約8割を占めるとされ、華人1人あたりの稼ぎはインドネシア全体平均の32人分に相当します。しかも従業員の多くがインドネシア人であるため、経済的格差とプリブミ(土着民)としての不満が常に存在し、1998年には大規模な排華暴動が発生しました。
インドネシアの華僑・華人は、数十年おきに虐殺や暴動といった大きな事件を経験しており、インドネシア生まれ・育ちの華人にとっても、一族にとっても、恐ろしい記憶と未来への不安が深く刻まれています。
⑤ インドネシアにおける中国移民の歴史
中国系のジャワへの移民は、西暦924年(唐・同光6年)に始まります。明代に鄭和が前後7回にわたって行った「下西洋(大航海)」(1405-1433年)の際、スマトラを7回通過し、ジャワには6回上陸したことで、中国からの大量移民を呼び込みました。
明末、インドネシアはオランダの植民地となりましたが、中国からの労働者や清の統治に反対する人々が続々と移住し、中国系の人口が大幅に増加しました。アヘン戦争(1840-1842年)後、清政府が海外渡航を大きく開放したことで、再びインドネシアへの移民ブームが起こります。1970年以降は、台湾・中国・東南アジアの専門家や資本家が続々とインドネシアへ投資を行うようになりました。
⑥ 「政治を避けて経済に関わる」処世術と、その代償
インドネシア華人は、政府の「政経不一致」のもとで、経済的優勢を持ちながら一貫して政治から遠ざけられ、政治的劣勢に置かれてきました。「政治を避けて経済に関わる」というのが、彼らの処世術です。「華人がいなければインドネシアの経済発展は難しい」という言い方ができるほど、経済的な存在感は大きいものがあります。
インドネシアにおける華人の経済規模は、おおむね次の階層構造で整理できます。
- 約170名の大企業家
- 約5,000名の中企業家
- 約25万名の小売業・レストラン・商店経営者
- それ以外の農民、漁民、工場労働者、会社員
しかし、インドネシア華人は当初から政治的に公平な待遇を得られず、圧迫・排斥・差別を受けてきました。華人と土着民(プリブミ)との確執は一貫して存在し、繰り返し「反華」「排華」の暴動が発生しています。インドネシア華人の発展の過程は、血と涙にまみれた歴史であったと言えます。
まとめ
インドネシアと関わる上で出発点となるのは、マレー系の経済的・社会的不満と、華人の経済的立場とそれに伴う恐れの両方を理解することです。表面的な人口比率や経済データだけでは、この国の市場の本質には到達できません。歴史的経緯と現在の構造の両方を踏まえた上で、関係構築を進めることが、インドネシア市場で長期的な信頼を築くための前提条件になります。
参考文献:陳燕南『インドネシア華人とその経済的地位』華僑研究センター
この記事の著者
高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。
関連リンク
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参考資料・関連情報
- 日本貿易振興機構(JETRO)インドネシア国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/
- 在インドネシア日本国大使館:https://www.id.emb-japan.go.jp/
- インドネシア共和国観光省:https://www.kemenparekraf.go.id/
- パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/
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