ここ10年間運良く中国・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシアなどアジア各国で働く機会を得ている。
初めての出会いは10年前にシンガポール・マレーシアでホームステイをさせてもらった経験からだ。当時は英語も初級でましてや中国語も全くできなかったので、それぞれの市場の様子はおろか友人との会話もうまくできないような状態だった。またその後、中国大陸に2年間居住し、中国ビジネスから撤退するという貴重な経験を得た。
現在はシンガポールと東京を拠点に、毎月ASEAN各国を回らせてもらっている。
拙い経験で個人的な感想ながら、中国と東南アジアASEAN諸国の市場の違いを、書き留めておきたいと思う。
※なお、私の経験則によるオリジナルなので巷で言われている事とは隔離もあるかもしれないが一つの事実である。都度加筆修正していきたいのでどうかご容赦頂きたい。
※2014年4月20日加筆修正。
【中国市場の特徴】- 日本企業が勝てない仕組み
1)中国諸政府によるコントロール、中国側が勝つ仕組・習慣
2)文革以降、不信がベースにある市場で、お金のやりとり・人間関係に注意
3)他人のことを気にする余裕が無い、大人口による競争市場
4)全て事を進めるに辺り都度利害・賄賂が発生
5)反日である。中華帝国再建が悲願、周りのアジア諸国は属国の意識多数
→日本企業・団体は現段階では他市場と徹底比較して、進出の是非を問うべき。
しかしながらアジア最大の市場であり必ず留意しなければならない市場として付き合い方を慎重に検討、撤退する判断基準を進出前に決める。
【タイ(バンコク)市場の特徴】- 男女比アンバランスで場当たり的だが、中間層増大で消費者マーケットも魅力的
1)社会保障が国民皆制度でなく、将来への不安、男性は家族を養う重圧
2)男:女=1:2、レディーボーイを含め女性数の増加・男性数減少の危機
3)男性は世界で最も浮気性、女性は非常に嫉妬深いと言われる
4)金銭欲が強く浪費癖も強い。女性の立場向上・組織内の躍進
5)現実からの逃避、タイ仏教の庶民解釈にもとづく来生への希望
6)文字を読む書くことをさける傾向、笑い話で「タイ人は1年間に8行しか文字を読まない」なども。 PR時には写真と鋭いキャッチフレーズがより重要
→この世を諦め、次の世の中に期待しているため、楽しい・気持ち良い商品サービスに勝機あり。また、平均所得が上がってきており、中流層も拡大。今までになかった本物の日本製品を求めています。
【マレーシア市場の特徴】- 政治の乱れで民族間感情が揺れ動く、15億人のイスラム社会の入り口
1)マレー人・華人・インド人3大主要民族の多民族国家
2)マレー人優先政策、ブミプトラ政策の弊害、マレー人有利で不満
3)華人が経済の大部分を占めることによる妬み・反感・賄賂
4)インド人の立場が低く、政府もインド人を後回しにする妬み・反感
5)前・現政府のやり方を問わない権力把握主義と日々起きる事件
6)マレーシア華人は6〜8言語が可能、優秀な人材として獲得競争が始まっている
7)アジアでもっとも厳しいハラル(イスラム合法)を守っており、世界の22%、イスラムマーケット15億人への入り口
8)イスラム教徒を中心に、人口以上の2800万人が年間観光に訪れる観光立国でもある
→ASEAN諸国でシンガポールを除き、最も先進国に近いマレーシアだが、政治・民族感情・宗教を理解しつつ市場開拓戦略が必須。世界のイスラム社会への入り口として、優秀なマレーシア人獲得も検討。また、イスラム市場と中国市場の中間としてのハブ利用もはじまっている。
【シンガポール市場の特徴】- プライドが・価格が・競争が「高い」市場。ASEANにおける金融・交通・情報のハブとして活用
1)シンガポール人と外国人専門家とのポジション争い、外国人労働ビザ獲得が困難に
2)家・車・生活全般が高価で家族との将来への不安
3)勝ち組と負け組、中心地の富裕層・ドーナツ外の庶民格差
4)英語偏重による息苦しさ
5)中国以外の成功した華人国家として諸外国華人からの希望・憧れ
6)金融を中心として東京以上にシステマチックなデータ中心の社会
7)半数近くが外国人で、様々な民族宗教が居住。見本市やASEAN進出時のテストマーケットとしても有効
→情報と貿易のハブ(アジア本社機能)としての機能を検討。税制も有利。
【インドネシア(ジャカルタ)市場の特徴】- 開かれた最大のイスラム系「市場」
1)ゆるいイスラムの縛り。お酒も場合によっては可
2)約5割が中卒、貧富の格差がますます拡大
3)交通インフラの悪さ、通信インフラはにじゅうまる。商圏に注意
4)個人は謙遜、団体では強気なインドエンシア人の性格。デモなどに注意
5)2030年までに3倍に増える中間富裕層。人口世界4位の市場
2020年までには人口が3億に、うち1.5億人が中間層に躍進
→他国とは異なるムスリム事情、世界第4位の3億人市場としてインドネシア人の生活向上のための商品・サービスを投入しWin-Winに。
【ベトナム市場の特徴】 - 9千万人の市場、中間層マーケットと生産市場のバランスが秀逸
1)反中。韓国はドラマやK-POPが人気で歴史事実の影響は軽減している。
2)ハノイ(官僚的、遠回し。北京に似る)とホーチミン(商業的、直接的。上海に似る)の人の違い、ビジネスのやり方の違い。
3)モバイル大国。スマホでの動画やSNS閲覧は月1,000円で使い放題で、広告表現も豊富。
4)スタバやイオンが進出、中進国の罠から抜けだそうとしており、平均年齢24歳、9千万人の市場は消費者市場としても生産拠点としても魅力。
→若い労働力、9000万人の大人口、消費者市場としても期待できる親日国マーケット。
(参考)【台湾市場の特徴】 - 中華圏・ASEANに出る前の第一歩として活用
1)インドネシアとならび、世界一の親日国。
2)中国大陸との付き合い方で国が2分。若者は自身を「台湾人」、古い世代は「中国人であり台湾人」である意識がある。
3)給料と不動産など物価とのアンバランス、若者は上海など大陸へ就職先を求めている
4)中国大陸市場に理解が深いため、台湾パートナーと組んで大陸に挑むことでチャイナリスクを大幅軽減できる。
5)ASEANに進出するまでの外国市場の学び、テスト、ステップアップとしての台湾進出はあり。
→信頼できる日本のパートナーとして、対中国でも、東南アジア華人とも、ビジネスがうまくいく可能性が高くなる。
同じASEAN諸国といっても、これだけ事情も異なる。
中国とASEAN諸国の最大の違いのひとつは、親日か反日かだ。
また、日本企業がどれだけ儲けていいか、政府の介入がどこまであるかの差も大きい。共産主義やアジアの発展途上国では企業が大きくなったら横取りすることもよくあることだから。事実、ASEAN諸国も、賄賂・政府の介入・部分的な反日など中国と同様にリスクはある。しかしその頻度だ、今まで積み重ねられてきたベースだ。
ぜひこれら市場を比較して、ご自分の足で現地に赴き、自身の目で確かめていただきたい。
私たちアジアクリックもお手伝いします。
引き続き、現地で市民の声に耳を傾けながら、日本とASEAN諸国間で情報のブローカー業を続けていきたい。
(アジアクリック/高橋学)
アジアからの観光インバウンド、各国SNS開設・運営、
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