当記事の3行まとめ
- シンガポールは東京23区ほどの国土に多民族が共存する先進的な都市国家で、独自の融合文化を持つ
- シンガポーリアンの国民性は「Kiasu(キアス)」——損をしたくない、何事でも一番になりたいという気質に象徴される
- ショッピングと食が日常の楽しみで、一人当たり名目GDPが日本を上回る水準ながら、競争社会に生きる強いプレッシャーがある
本記事では、都市国家シンガポールの概略と、シンガポーリアン(シンガポール国民)の国民性について整理します。日本からの観光誘致やビジネス進出を検討する際の前提理解として、活用していただければと思います。
① 先進的な複合多民族国家としてのシンガポール
シンガポールは、自国資源が乏しい中で移民を最大限に受け入れつつ、戦略的な開発政策を展開してきました。その結果、アジアのハブ的役割を担う先進国へと成長を遂げました。
国土は約716平方キロメートルと、東京23区ほどの面積です。中華系(74%)、マレー系(13%)、インド系(9%)、ユーラシアンとプラナカン他(3%)と複数の民族が共存し、独自の融合文化を生み出しています。人口は約507万人(うちシンガポール人と永住者は約373万人)で、公用語は英語、中国語、マレー語、タミル語の4つ。大半の国民が2つ以上の言語を操ります。
複数の民族間でビジネス以外での交流は決して多くないものの、国民の「シンガポーリアン」としてのアイデンティティは強く、誇りを持っているのもこの国の大きな特徴です。
② 「Kiasu(キアス)」——シンガポーリアンの国民性を象徴する言葉
シンガポーリアンの性格は、現地語の「Kiasu(キアス)」という言葉でしばしば語られます。意味は「損をしたくない」「何事でも一番になりたい」というもので、1965年の独立以降、小国でありながら数々の困難を乗り越え、周辺国との政治的・感情的な出来事をバネにして驚異的な経済発展を遂げてきた過程で育まれた気質と考えられます。
Kiasuは単なる国民性の話ではなく、シンガポール社会の経済的プレッシャーと表裏一体の概念です。住宅ローン、教育費、競争社会の中で生きる人々の合理的な対応として、Kiasuという気質が形成されてきたと捉えるのが正確です。
③ 楽しみは「ショッピング」と「食べること」
シンガポーリアンにとっての楽しみといえば、ショッピングと食です。一人当たり名目GDPが日本を上回るシンガポーリアンの生活水準は高く、無数のショッピングセンターが旺盛な購買意欲を満たしています。
外食産業も非常に盛んで、3食すべて外食というシンガポーリアンも珍しくありません。特に日本料理は、ヘルシーで美容にも良いという評価から非常に人気が高く、飲食店検索サイト「ぐるなびシンガポール」に登録されているレストランだけでも510店舗に及びました(記事公開当時)。寿司・天ぷら・ラーメン・カレーまで、ほぼあらゆる日本食がショッピングセンター内を中心に味わえる環境が整っています。
一方、国土が小さいシンガポールには娯楽スポットが限られ、日常の娯楽は「K-BOX」に代表されるカラオケボックス、映画、ビリヤード程度というのが現状です。避暑、美食、異文化体験を求めて、日本を含む年に数回の海外旅行を1年先まで計画しているシンガポーリアンも少なくありません。
国を挙げてのセールも年2回開催され、普段は高価なブランドが半額以下になることも珍しくありません。
④ 競争社会に生きるシンガポール人たち
シンガポールには、マレーシアなど周辺国や欧米から、より質の高いキャリアと給料を求めて、英語を母国語レベルに操る多くの外国人が集まり働いています。実際にシンガポールでビジネスをすると、初対面で「学歴」「キャリア」「英語レベル」を確認されるのが一般的です。
大学院卒やMBA取得者が多いシンガポールビジネス界においても、格差は広がっています。一般のビジネスパーソンは30年ローンで数千万円のマイホームを購入し、子どもにより良い英語教育・大学院教育を受けさせるために働き続けます。ハイキャリア層は、よりセレブな生活を実現するために収入を最大化していきます。
「英語と学歴」「キャリア」「給与」の3要素が判断軸の中心にあるシンガポールビジネスパーソンは、プロジェクトを共にする際にも、報酬だけでなく「自身のキャリアにどうプラスになるのか、これは本当のチャンスなのか」を冷静に見極めます。ビジネス面では非常にドライな判断軸を持っているのが特徴です。
⑤ シンガポールの情報インフラとSNS
こうした都市国家で生きるシンガポール人にとって、キャリアアップのための情報と人脈は何よりも重要です。シンガポール人口507万人のうち、4人に1人が使っているSNSがあり、ビジネスパーソンはほぼ全員が利用していると言える状況です。
このSNSの特性と、シンガポール人の情報獲得方法・コミュニケーション方法については、別記事で詳しく整理しています。
まとめ
シンガポール市場と向き合う際の前提は、3つです。
1つ目は、多民族が共存する先進的な都市国家であり、独自の融合文化を持つこと。2つ目は、Kiasuに象徴される「損をしたくない・一番でありたい」という国民性が、経済的プレッシャーと一体になった構造であること。3つ目は、ショッピングと食が日常の楽しみで、海外旅行への支出意欲が高い消費者層が厚く存在すること。
これらを踏まえた上で、観光誘致でもビジネス展開でも、「シンガポーリアンの判断軸(合理性・キャリア・価値)」に直接訴える設計が、結果につながる近道になります。
この記事の著者
高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。
関連リンク
公式サイト:https://asiaclick.jp
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お問い合わせ:info@asiaclick.jp
参考資料・関連情報
- 日本貿易振興機構(JETRO)シンガポール国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/sg/
- シンガポール政府観光局(Singapore Tourism Board):https://www.stb.gov.sg/
- シンガポール政府統計局(Department of Statistics Singapore):https://www.singstat.gov.sg/
- パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/











