2013年6月5日水曜日

タイ人観光客への観光インバウンド戦略 -言語を含めた「現地化」を目指す

当記事の3行まとめ

  1. バーツ高と円安を背景に、タイ人訪日客は前年同期比31%増と急増している
  2. タイ人観光客は団体ツアー比率が比較的高いため、「日本らしさを一度に満喫できる」プランの情報発信が有効
  3. SNS言語を含めた「現地化」、特にFacebookでのタイ語対応が、タイ市場でのインバウンドの分かれ目になる

1998年以来約20年ぶりとなる大幅なバーツ高と円安の流れに乗り、タイ人観光客は急増の一途をたどっています。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、ある年の1〜2月のタイ人訪日数は前年同期比31%増の3万6,000人で、東南アジア主要5カ国の中で最大の伸びを記録しました。

本記事では、タイ人観光客のインバウンド戦略の核となる「現地化」の考え方を整理します。

① 一度に大勢のニーズに応える「日本らしさ満喫プラン」が刺さる

現状、タイ人は団体ツアーで訪れる比率が比較的高い市場特性を持っています。したがって、一度に大勢の訪日者のニーズに応えられるテーマやプランの情報発信に力を入れることが、効果につながりやすくなります。

象徴的な事例として、北海道の歌登(うたのぼり)という町の町営施設「うたのぼりグリーンパークホテル」が、タイ人観光客の人気を集めて話題になったケースがあります。同ホテルでは、「日本らしさを一度に満喫したい」というタイ人の願いに応えて、たこ焼き作り、流しそうめん、浴衣に着替えての餅つきといった、一見すると北海道ならではの体験とは言い難い型破りのプランを打ち出しました。結果として集客に成功し、地方の中規模施設でもタイ人インバウンドで結果を出せることを示した好例となりました。

「北海道らしさ」よりも「日本らしさを総合的に体験できる」という設計が、タイ市場では響くという示唆を含んでいます。

② Facebookが圧倒的に強いタイ市場——タイ語対応が前提

タイ人のニーズをより多く・効率的に捉えるためには、Facebookでの情報発信が中核チャネルになります。首都バンコクは、都市別Facebook利用者数で世界最上位クラスを誇るほど、タイ人はFacebookを生活インフラとして使い込んでいます。

英語でのコミュニケーションに慣れているシンガポールやマレーシアと異なり、タイのSNS使用言語はタイ語です。したがって、タイ人向けに発信するなら、英語ではなくタイ語での情報提供が前提になります。タイ人からの人気が高い関西地方や沖縄県では、すでに英語・中国語・韓国語に続いてFacebookページのタイ語対応を進めています。

③ 「現地化」がインバウンドの分かれ目

より効果的なタイ人観光客のインバウンドを設計するなら、ソーシャルメディアの言語を含めた「現地化」にチャレンジすることが、最も投資対効果の高いアプローチになります。

「現地化」とは、単に翻訳することではなく、タイ人が好む言葉遣い・写真の選び方・タイ語のキャッチコピーまで含めた、コンテンツ全体のローカライズを意味します。日本の観光資源をそのまま英語で発信するのではなく、タイ人の感性に合わせた表現に組み替える発想が、タイ市場で結果を出す鍵になります。

まとめ

タイ人観光客の急増局面において、勝ち筋は明確です。「日本らしさを一度に満喫できる総合プラン」「Facebook中心の情報発信」「タイ語による現地化」——この3点を組み合わせた設計が、タイ市場でのインバウンドの効果を最大化します。地方都市や中規模施設でも、設計次第でタイ人を引き寄せることが可能だというのが、各地の事例から得られる重要な示唆です。


この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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