今日のテーマは「マレーシア華人」です。
先日のブログで、華僑・華人が東南アジア各国でも一定の地位を持っていることに触れました。
今日は、東南アジアビジネスで避けて通れない、各国の華僑ネットワークについて、マレー半島の歴史を通してもう少し掘り下げてみたいと思います。
▼私もマレーシア、シンガポールで華人たちと交流し、幸い日本でも複数のマレーシア華人たちが周りにいるのですが、マレー半島の華人のマルチリンガルな語学力(英・中・マレー語・現地語)には驚かされます。
シンガポールにて、マレーシア華人のホストファミリーと |
マレー半島にはシンガポール人、シンガポール人となったマレーシア華人、マレーシアの華人と様々な背景を持った人たちがいます。
経済的にもシンガポール人では8割が華人、マレーシアでは3割が華人で7割の経済を握っていると言われます。
日本は米国に次ぎマレーシアへの第二の投資国であり、マレーシアに進出する日系企業は約1,400社。主な企業としてはダイソーやユニクロ、伊勢丹、無印良品などが特にマレーシア人の生活に馴染んでいます。
しかし中国大陸に格差社会・超資本主義の問題があれば、マレー半島にも歴々とした民族間問題があります。
▼かつてイギリス領で合った現シンガポールを含めたマレーシア半島では、19世紀前半マラッカを中心とした英式教育を受けたコミュニティと、19世紀後半に中国南部(福建、客家、広東、潮州、海南など)より移住をしてきた中国人たちが各コミュニティをつくり、現在に至るまで地方の伝統と方言を守っています。
20世紀前半の「中華ナショナリズム」、そして中華民国の「北京語(標準語)教育」により、言語と連帯感が強まり、それまで個別にあった中国人意識をアジア全体で持つようになりました。
しかし、第二次世界大戦後に中華人民共和国が設立すると、華僑は現地への永住を余儀なくされ、中国人という意識を薄めつつ現地化し「華人」として生活するようになります。
▼マレーシアでは、3割もが華人であるものの「マレー語」が公用語とされ、平等な市民権に反対したマレー人に配慮し、イギリス支配による「マレー人の優位」が確立。農業のマレー人に対して錫加工の華人は経済貿易力を付け、経済格差が広がります。1963年にはマラヤ連邦が成立するが2年後には華人とマレー人の対立によりシンガポールが脱退。1969年、公用語をマレー語とするのを潔しとしない華人と、経済格差に不満を持っていたマレー人の間で死者196人を出す暴動「ティガブラス メイ」に発展、マレーシアの国策は全てマレー人優位とする「ブミプトラ政策」が制定され、マレー人の優位に対しての議論を一切禁止。イスラム教が正当とされ、中国・華人文化は外国文化と同等とされました。
「ブミプトラ政策」によって、華人は華人経済の中で仕事を行わざるを得ず、もし華人がイスラム教に改宗しても華人より見下されることになります。逆にマレー人は土地や建物の売買、公務員の採用、大学入試および主な産業面において優先・保護され、6割の人口とともに政治の面で圧倒的な力を持っています 。
2011年9月の収入格差は華人が4,437リンギ、インド系が3,456リンギで続き、マレー系は2,711リンギ。 「政治はマレー人、経済は華人」政策の影響が強く残っています。
「華人は華人とマレー人はマレー人と、規律のあるが如く、 別の民族と会話をしている様子はほとんど見受けられない」 - 立教ビジネスクリエイターより |
かつてマレーシア華人の友人が「マレーシアでは、華人の立場はないから」とつぶやいたことを思い出します。
現政府は多民族性を国の原動力とする「1(One)マレーシア」を掲げ、従来の農作物や鉱産物の輸出、観光業に依存した体質からの脱却を果たし、2020年に先進国入りするとの目標「ワワサン(マレー語でvisionの意)2020」を掲げる「東南アジアの優等生」マレーシア。
Satu Malaysia! |
多民族それぞれの立場と苦しみとプライドを理解することから、マレー半島とのすべてが始まると言えるでしょう。
参考文献: 太田 竜一『東南アジアの華僑・華人 ― マレーシア、シンガポールにおける言語問題 ―』
高橋学 / アジアソーシャルマーケッター
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