当記事の3行まとめ
1. タイ人は写真を撮るのも撮られるのも大好きで、Instagramの世界写真アップロード地ランキングで上位を独占している
2. 「てんや」のカバー画像変更キャンペーン、「ネスレ・フィットネス」のダイエット写真投稿キャンペーンが好結果を出している
3. タイ市場では「面白そう」が行動に直結するため、写真キャンペーンはブランディングと販促を同時に実現する有効な手段
前提:タイ人の写真好きを示す客観データ
タイ人は写真を撮るのも撮られるのも好きで、これは個人の趣味の話にとどまらず、市場特性として明確に表れています。スナップ写真共有アプリのInstagramが発表した世界の写真アップロード地ランキングでは、タイの場所が1位と2位を独占したこともあり、タイ人と写真の相性の良さは数字でも裏付けられています。
本ブログでは過去の記事「タイ人が教える、タイ語での観光ホームページの制作事例」でも、写真重視のタイ人の思考特性に触れました。本記事では、写真活用がタイ市場で実際にどのように成果を出しているか、Facebookでの2つのキャンペーン成功事例から考察します。
① 「てんや」——Facebookカバー画像変更でクーポン進呈
2013年10月、バンコクに東南アジア進出第一号店をオープンした天丼チェーン「てんや」が、開店前にFacebookで実施したのが、カバー画像変更キャンペーンです。
内容はシンプルで、自分のFacebookカバー画像を「てんや」のオリジナル画像に変更したユーザー300名に、300タイバーツ(約950円)のクーポンを進呈するというものでした。
日本では「自分のFacebookページのデザインの統一感を崩したくない」と考える人が多く、企業ブランドの画像を自分のカバーに設定することへの抵抗感は強い傾向があります。一方、タイ人は「サバーイ(心地よい、愉快)」の精神で、デザインの整合性を気にせず楽しむことを優先します。結果として、300名を超えるFacebookカバーが「てんや」バージョンに置き換わり、店舗認知の拡散効果を生みました。
バンコクで日本食店が1,000店舗を優に超える競争環境の中で、開店前にこの規模のリーチを獲得できたのは、タイ人の文化特性を読み込んだキャンペーン設計の成果と言えます。
② 「ネスレ・フィットネス」——ダイエット写真投稿で有名誌に掲載される企画
健康食品ブランド「ネスレ・フィットネス」が展開したのは、14日間のダイエット過程を写真で投稿するキャンペーンです。
優勝者には、アメリカの有名ファッション誌『Cosmopolitan』の誌面を飾る権利が与えられるという仕掛けで、この企画は「自分も有名誌に出てみたい」というタイ人の自己表現欲求に見事に応えました。参加者が続出し、ブランドへの好意度と健康食品としての位置づけを同時に高めるキャンペーンとなりました。
このキャンペーンが秀逸だったのは、商品の機能訴求(健康・ダイエット)と、参加者の願望(有名誌掲載)を、写真というメディアで自然に接続した点にあります。
③ 2つの事例から読み取れる、タイ市場の本質
2つの事例に共通するのは、写真の自由な表現を活用し、タイ人を楽しませ、遊び心を加えるという設計思想です。これは単なる「写真キャンペーンが有効」という戦術論ではなく、タイ市場の文化的特性に根ざした構造的な原則です。
日本の消費者は、個人写真のネット公開に保守的な傾向があります。一方、タイ人は「面白そう」という感覚がそのまま行動に直結する文化を持っています。この違いは、日本国内向けのキャンペーン設計をそのまま持ち込んでも機能しないことを意味します。
もちろん、個人情報の適切な取り扱いは大前提です。その上で、タイの遊び心を活かしたキャンペーン設計は、訪日インバウンド対策にも応用できる発想です。
まとめ
タイ市場における写真キャンペーンは、消費行動・ブランド認知・SNS拡散の3つを同時に動かす強力な手法です。「てんや」のFacebookカバー変更、「ネスレ・フィットネス」のダイエット写真投稿——どちらも、タイ人の文化的特性と参加者の心理を正確に読み込んだ設計が成果につながっています。
訪日インバウンドや日本ブランドのタイ市場展開を考える際にも、「タイ人にとって楽しめる仕掛け」と「写真というメディア」の組み合わせは、検討する価値の高い切り口です。
———
この記事の著者
高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。
関連リンク
公式サイト:https://asiaclick.jp
note:https://note.com/aseanmana
お問い合わせ:info@asiaclick.jp
参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)タイ国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/
・タイ国政府観光庁(TAT):https://www.tourismthailand.org/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/
0 件のコメント:
コメントを投稿