2013年7月8日月曜日

イスラム教徒の日本観光〜ハラルとお祈りスペース、神戸モスクという観光資源

当記事の3行まとめ

  1. イスラム教徒は1日5回の礼拝が必要で、日本観光ではお祈りスペースの不足が大きな課題になっている
  2. 1935年に建てられた神戸モスクは、阪神・淡路大震災を生き延びたモスクとして、ムスリム観光客の関心を集めている
  3. モスク周辺にハラル対応レストランが揃うことが、ムスリム観光客の訪問動機を高める重要な要因になる

マレーシア特派員のファリスです。前回の記事では、ハラルとは何かについて整理しました。本記事では、日本に暮らす中で多くの日本人と交流してきた経験を踏まえて、ムスリムの食事のルールと、日本観光におけるムスリム視点の課題を整理します。

① ハラムの基本——豚肉、酒、イスラム法に則って屠られていない肉

多くの日本人と交流してきたからこそ、ハラルとハラムについて、せめていくつかの基本だけでも知っていただきたいと強く思っています。

ハラム(食べてはいけないもの)の中で代表的なのは、次の3つです。

  • 豚肉
  • お酒
  • イスラム法に則って屠殺されていない牛肉・鶏肉

もちろん、これら以外にもハラムに該当するものはあります。ただ、上記の3つを最低限として知っていただきたいのは、これらが日常の料理によく使われている食材だからです。

逆に、ハラル(食べてよいもの)として、魚系の食材は基本的にすべて食べられるということも、合わせて知っていただけると助かります。

② 信仰を守ることへの理解——「日本だから食べちゃえばいい」は通じない

ほとんどが無宗教の日本人にとっては、なぜこんなルールを一生懸命守っているのかと不思議に思われるかもしれません。しかし、宗教は信じることが基本にあります。その宗教を信じている人にとって、信じていない人から不思議に見えるとしても、信仰を守ることは当たり前のことです。

たとえば、日本人の友人から「日本にいるんだから食べちゃえばいいじゃん」と冗談で言われた経験が、私には何度もあります。冗談だと分かっていても、イスラム法を真剣に守って生きている人にとっては、こうした言葉は驚きを伴います。文化の違いを尊重するというのは、こうした小さな場面の積み重ねでもあります。

③ 日本観光でムスリムが求めるもの——お祈りスペースの確保

では、日本観光に関して、ムスリムは何を求めているのでしょうか。私の両親は、ある年の3月に日本へ旅行に来ました。様々な観光地に案内し、楽しんでもらえたのですが、両親が「こういうものがあったらいいな」と話していたものがあります。それは、お祈りができるスペースです。

イスラム教では、1日に5回お祈りをする必要があります。マレーシアでは、観光地はもちろん、公園やデパートなど、ほぼあらゆる場所にお祈り専用の部屋(スラウ)が用意されています。これによって、ムスリム観光客は安心して観光することができます。

一方、日本ではお祈りができる場所がほとんどなく、ムスリム観光客にとっては不便な状況が続いています。前回の記事でも書いたように、観光地ではハラル対応のレストランやお店もまだ少なく、これらが増えていけば、ムスリムにとって日本での生活と観光が格段に便利になります。

④ 1935年建立の神戸モスク——ムスリム観光客の人気スポット

ムスリム観光客が興味を持つ観光地は、何でしょうか。イスラム教の影響が強くない日本では、モスク自体がムスリムにとって関心の高い場所の一つになります。

たとえば、1935年に建てられた神戸モスクは、1995年の阪神・淡路大震災のときに倒壊しなかったモスクとして、ムスリム観光客の間で人気を集めています。日本最古のモスクの一つでありながら、災害を生き延びた歴史的な建造物であるという点が、訪問の動機になっています。

神戸モスクが人気スポットになっている要因の一つは、モスクの周辺にハラル対応の食事を提供するレストランやお店があることです。「礼拝できる場所」と「ハラルの食事」がセットで揃っていることが、ムスリム観光客の訪問先選びにおいて非常に重要になります。

⑤ 日本の伝統文化への関心——お寺もムスリム観光客の関心の対象

日本は世界的に見ても、独自の文化が豊富な国として知られています。伝統的な文化が体感できる場所、たとえばお寺もムスリム観光客が興味を持つ観光地の一つです。異なる宗教文化に触れる体験は、ムスリムにとっても観光の重要な要素になっています。

まとめ——お祈りスペース+ハラル食事のセットが、訪日ムスリムの体験を変える

ムスリム観光客の訪日体験を高めるために、日本側に求められるのは大きく2つです。1つはお祈りができるスペースの確保、もう1つはハラル対応の食事を提供するレストラン・お店の拡充です。

神戸モスクのように、両方が揃っている場所は、それだけで強力な観光資源として機能します。逆に、片方だけでは訪問の動機としては不十分です。世界15億人のムスリム市場を訪日インバウンドとして取り込むためには、点ではなく面で「礼拝+食事+観光体験」の三位一体を整える設計が、これからの鍵になります。


この記事の著者

ファリス(アジアクリック・ハラル/マレーシア担当)
マレーシア出身。イスラム教徒の視点から、ハラル文化・訪日ムスリム観光・現地市場に関する一次情報を発信。アジアクリック(代表:高橋学)所属。

監修

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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