2018年1月21日日曜日

【2018年度版】ベトナム人観光客を誘客する3つのポイント

当記事の3行まとめ

1. ビザ未解禁のため団体ツアー中心、ただし商用個人旅行が4割まで伸びている
2. ベトナムの旅行会社は日本の地方知識が浅いため、日本側ランドオペレーターによる丁寧な造成支援が前提
3. 訪日情報源はJNTO・旅行会社サイト・Facebookの3経路に集約、若年層にはFacebookとWebでアプローチ

前提:ベトナム訪日市場はビザ未解禁、団体ツアー主体だがFIT化が始まりつつある段階

ベトナム人観光客はまだ訪日ビザが解禁されておらず、基本的には旅行会社経由で日本旅行を申し込むことになります。これがベトナム市場の最大の構造的特徴であり、タイやシンガポールのようなFIT主導の市場とはアプローチの起点が異なります。

ただし、近年は商用を兼ねた訪日が約4割を占めるまでに増えており、純粋な観光以外の渡航ルートからFIT個人旅行の素地が育ち始めています。2018年は、ベトナムにとって本格的なFIT旅行元年に近い局面と捉えています。

私自身、ベトナム市場の動向を継続的に見てきた立場から、ベトナム訪日誘致に必要な3つのポイントを共有します。

① 団体ツアーを主軸にしつつ、商用兼FITも視野に入れた旅程造成を行う

ビザ未解禁の構造上、ベトナム訪日の主軸は依然として団体ツアーです。一方で、商用渡航と観光を組み合わせた渡航が4割を占めるという事実は、PR・旅程造成のターゲット設計を「純粋観光だけ」に絞り込むと取りこぼしが大きいことを意味します。団体ツアー商品と並行して、商用兼観光を想定した短期型・複数都市周遊型のプランも視野に入れて造成すべきです。

② ベトナム旅行会社への情報提供と、日本側ランドオペレーターの伴走が前提

ベトナム訪日のアプローチも、まず現地旅行会社との協力が出発点になります。日本の地方への対応力という点では、HISなどの日系旅行会社がやはり一日の長があります。

ローカル旅行会社は、大手であっても2018年1月時点では、日本の地方のツアー日程を自社単独で造成できるほどの経験と知識を持っていません。したがって、ローカル旅行会社と組む際は、日本側ランドオペレーターが旅程造成のコミュニケーションを密に引き受ける体制が必須になります。「商品を渡せば売れる」段階ではなく、「商品の作り方から伴走する」段階だと認識すべきです。

③ 若年層にはFacebookとWebでアプローチする

ベトナム人にとっての訪日情報源は、現状ほぼ次の3経路に集約されています。

・JNTOなどの訪日ポータルサイト
・旅行会社のWebサイト
・JNTOや旅行会社のFacebookページ

民間の訪日メディアはまだ数えるほどしかなく、情報チャネルが寡占的に絞られているのがベトナム市場の特徴です。新聞好きと言われたベトナム人も、いまや情報接触の中心はスマートフォンに移行しています。

注意すべきは、ベトナム人は無名のブランドやファン数の少ないFacebookページを信用しない傾向があることです。発信を始める際は、フォロワー基盤の整備、現地で認知された旅行会社・公的機関との連携、継続的な投稿の3点を前提に設計する必要があります。

まとめ

以上、ベトナム訪日市場へのアプローチを3つのポイントで整理しました。タイやシンガポールとは異なる構造を持つベトナム市場では、「団体ツアー主軸+商用FITの取り込み+日本側の造成伴走」が当面の基本戦略になります。

ベトナム人にとっての日本のイメージは、現時点では桜と雪が中心です。今後どの観光地が話題化し、新たな訪日先として定着していくか。地方にも十分に勝機のある市場だというのが、2018年時点での私の見立てです。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

関連リンク
公式サイト:https://asiaclick.jp
note:https://note.com/aseanmana
お問い合わせ:info@asiaclick.jp

参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)ベトナム国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/
・在ベトナム日本国大使館:https://www.vn.emb-japan.go.jp/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/

公開日:2018年1月21日

2018年1月16日火曜日

【2018年度版】シンガポール人観光客を誘客する2つのポイント


当記事の2行まとめ

1. 個人旅行(FIT)比率が9割超のため、英語Web上で「ここにしかない体験」を発信し続ける
2. 1割の団体ツアー層には、東京・大阪と組み合わせられる1〜2泊のカセットプランを提供する

前提:人口約560万人のうち年間30万人以上が訪日するリピーター市場

シンガポールからアジアクリックの高橋学です。シンガポールで起業してから4期が経ちました。実際に住んで働いてみると、シンガポール人もごく普通の人々です。一方で、独立から52年でジャングル状態の土地からここまで発展させた国家運営は、他に類を見ません。小国だからこそ可能な挑戦や統制という側面はあるものの、リー・クアンユー氏が築いた国家設計は世界的に見ても傑出しており、シンガポール国民が誇りとしている通りだと感じます。

本日は、この熱帯の小国シンガポールからの訪日誘致について、2つのポイントをお伝えします。シンガポール人が訪日に求めているのは、洗練されたものではなく、生に近い本物の体験です。

なお、シンガポールの人口は約560万人。そのうち30万人以上が毎年日本を訪れており、これは台湾・香港に次ぐ規模のリピーター市場です。新規開拓ではなく、リピーターに深く・より日本的な情報を発信し続けることが、この市場の戦略の中心になります。

① 個人旅行(FIT)比率9割以上——英語Webでの情報発信が中心戦略

シンガポール人観光客の典型像を整理すると、英語と中国語がほぼネイティブ、大学院卒も多く、IT環境の整備度合いは日本・韓国を上回ります。

この属性が意味するのは、インターネットでの情報収集と旅行計画は彼ら自身で完結できるということです。さらに、本物の情報と広告を見分けるリテラシーも高水準にあります。したがって、シンガポール市場へのアプローチは「ここにしかない観光スポット、ここでしかできない体験」を英語のWeb上で発信し続けることが軸になります。

媒体としては、Facebookでも、英語のホームページ+Google広告でも有効です。重要なのは「シンガポール人の旅行先候補の一つに、自分の地域を入れ続ける」という継続的な情報提供の姿勢です。なお、シンガポール市場では中国語コンテンツは原則不要で、英語のみで十分にリーチできます。

② 1割の団体ツアー層には、1〜2泊のカセットプランを提供する

シンガポール訪日市場でアプローチが難しいのは、残り1割の団体ツアー(GIT)層です。ダイナスティなど大手旅行会社もすでにFITパッケージを揃えてきており、団体客だけでは売上が立てられなくなっているのが現状です。

それでは1割の団体ツアー利用者は誰か。具体的には、3世代家族での渡航、または両親を連れて気軽に日本旅行を楽しみたい30代の子連れ夫婦などが中心です。彼らに共通するキーワードは「楽で楽しい、移動が楽で、思い出の写真がたくさん撮れる旅程」です。

このセグメント向けには、東京や大阪に組み合わせて販売できる1〜2泊規模のカセットプランの提供が有効です。旅行会社や担当者の嗜好によって組み込み条件は異なりますが、現実的にインアウトしやすい動線設計と、最後の一押しとしての助成金が、団体ツアーへの組み込み確率を引き上げます。

まとめ

シンガポール訪日市場は、9割のFIT層への英語Web発信と、1割のGIT層への東京・大阪連携カセットプランの2軸で攻めるのが基本戦略です。便利さや洗練ではなく、その地域でしか得られない生に近い日本体験を、リピーターに対して継続的に届け続けることが、この市場で勝ち残る鍵になります。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)シンガポール国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/sg/
・シンガポール政府統計局(Department of Statistics Singapore):https://www.singstat.gov.sg/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/

公開日:2018年1月16日

【2018年度版】 マレーシア訪日市場の4つの特徴——多民族国家ならではの訪日構造を読み解く

当記事の4行まとめ

1. マレー系とマレーシア華人は訪日動機・ハラル条件・購買行動が異なるため、設計を分ける必要がある
2. マレー系ムスリム旅行者にとってハラル対応は最重要条件
3. 大家族文化を背景に、年配者を含む団体ツアー需要が一定規模で残る
4. 若年層FITの訪日準備はスマートフォン上で完結する

前提:マレーシアは多民族国家であり、訪日層もマレー系と華人系の二層構造

マレーシアは多民族国家であり、訪日市場における2大セグメントは、イスラム教徒であるマレー系と、マレーシア華人です。両者は文化的背景・宗教条件・購買行動が大きく異なるため、シンガポール(FIT9割)やタイ(民族融和を経た自由な訪日形態)とは違い、セグメント別にアプローチを設計する必要があります。

マレー系は、ブミプトラ政策により最上位に位置づけられている民族で、生活面で優遇されています。法律上、マレー系はイスラム教徒であることが定められています。

一方、マレーシア華人は、4〜5世代前に主に中国大陸南部から移住してきた中華系の人々で、現地での土着化を経て、富とネットワークを持つ一族も多く存在します。

マレーシアは熱帯気候で日本のような四季がないため、春の桜・秋の紅葉・冬の雪に関するアクティビティ、および季節行事や風習への関心が共通して強いのが特徴です。訪日初回は東京・関西などのアクセスしやすい都市と日本文化体験から始まり、2回目以降に北海道・九州・ゴールデンルート、さらにその先で東北・四国などの地方へと周遊が進みます。

① マレー系とマレーシア華人の違いを理解する

マレー系訪日者は、ムスリムであるためハラル対応が前提条件となります。ただし、現時点では日本のハラル対応に過度な期待はせず、カップラーメンなどを一定量持参して自衛しながら訪日旅行を行っているのが実態です。日本側がこのギャップを埋められれば、マレー系市場は大きく伸びる余地があります。

マレーシア華人は宗教上の制約がない分、購買行動は同行する家族の楽しみ・嗜好・期待を満たすことが最優先になります。具体的には、孫がアニメ好きであれば聖地巡礼を組み込み、祖父への孝行旅行であれば祖父母が楽に楽しめる動線を最優先するなど、一族のピラミッド型家族構成に合わせて旅程が決まり、価格よりも体験の質が優先される傾向があります。

② マレー系ムスリム旅行者にとってハラル対応は最重要条件

マレー系ムスリムは、食事・礼拝・アルコール・観光地での配慮など、複数の条件をクリアできる旅程を求めます。日本側の現状はハラル対応が不十分であるため、訪日者は持ち込み食品で自衛している段階です。

逆に言えば、ハラル認証取得・礼拝スペース整備・ハラル対応レストランの動線への組み込みといった対応を進められた地域は、マレー系市場で先行優位を築けるということです。日本のハラル対応はまだ初期段階にあり、地方であっても参入障壁は高くありません。

③ 大家族文化を背景に、団体ツアー需要が一定規模で残る

マレーシアでは、年配者を含む3世代以上の大家族での訪日が珍しくありません。年配者の移動や海外での不便に対する不安があるため、GIT(団体ツアー)を得意とするクアラルンプールの中華系団体旅行会社に相談・参加するルートが定着しています。

ただし、富裕層はこのパターンに限らず、オリジナルツアーを手配して家族の希望を細部まで反映させる形を選びます。「団体ツアー=価格重視」ではなく、「団体ツアー=家族の安心と利便性重視」という前提で商品設計を考える必要があります。

④ 若年層FITの訪日準備はスマートフォン上で完結する

マレーシアは訪日ビザが解禁されているため、若年層はより安価な個人旅行を組みます。彼らの行動パターンは次の通りです。

・友人と日程を擦り合わせる
・その期間のAirAsia等LCCの価格をチェックし、まず航空券を確保する
・Facebookの口コミを参照しながら、興味を持った観光スポットをGoogleマイマップに登録していく
・マイマップ上で移動計画を組み立てる

訪日準備のすべてがスマートフォン上で完結する点が、マレーシア若年層FITの行動の特徴です。日本側の情報発信も、Facebook・Googleマップに対応した形でなければ選択肢に入りません。

まとめ

マレーシア訪日市場で押さえるべきは次の4点です。

・マレー系とマレーシア華人で動機・宗教条件・購買行動が異なる
・マレー系ムスリムにとってハラル対応は最重要条件
・大家族文化を背景に、団体ツアー需要が一定規模で残る
・若年層FITの訪日準備はスマートフォン上で完結する

シンガポール(FIT9割)やタイ(民族融和を経た自由な訪日)とは異なる、多民族国家マレーシアならではの訪日構造があります。セグメント別の設計を前提に取り組むことが、この市場で結果を出す出発点になります。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)マレーシア国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/my/
・マレーシア観光局(Tourism Malaysia):https://www.tourism.gov.my/
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公開日:2018年1月16日

2018年1月12日金曜日

【2018年度版】タイ王国マーケット——訪日、進出、お薦めビジネス

タイ・バンコクからサワディカップ、アジアクリックの高橋学です。

今日は2018年度版として、ASEAN諸国の訪日市場の特徴をお伝えします。基礎データはJETROおよびJNTOの最新情報をご参照ください。

■タイ王国

1)タイの訪日市場

ASEANの中で、FIT誘致が最も効果を出しやすいのがタイランドです。日本人気が安定して続いているため、PRはFacebookとパンティップ掲示板の二本柱が有効です。

グループツアーについても、主要旅行会社が訪日商品の造成に前向きです。商談時には、観光地の核となる魅力と、補助金などビジネス条件の二点を整理して持参し、旅行会社と協働でツアーを組み立てるのが定石です。

2)タイへの進出

タイは消費市場としても生産拠点としても魅力があります。

消費市場としては、バンコクに加え、コラート(ナコーンラーチャシーマー)やチェンマイといった地方主要都市にも、サービス業・飲食業の層が厚く形成されています。生産拠点としても、人材とインフラの安定度が高く、結果として日本からの視察件数はシンガポールを上回る水準にあります。

3)タイでのビジネスのお薦め——3つの切り口

① 訪日

2017年度のタイ人訪日客数は80万人を超え、シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピンの2倍以上の規模に達しています。タイでは4年以上にわたり、訪日旅行が最も人気のある消費商品であり続けています。中間層以上は休暇と予算が揃うたびに日本を訪れ、日本料理とタイとは異なる文化体験を求める流れが定着しました。個人旅行・団体ツアーいずれにおいても、相手は日本への興味が素直に強いタイ人であり、他のASEAN市場と比べて取り組みやすい市場だと実感しています。

② 高付加価値産業

経済成長に伴い、タイでは富裕層の拡大と中間層との格差拡大が同時進行しています。消費の質も上がっており、バンコクの大学生は美味しさだけでなく健康価値の高い食品を価格を厭わず購入し、スマートフォンではなくキヤノン・OLYMPUS・富士フイルムといった日本ブランドの一眼レフカメラを親にねだる層も出てきています。

その背景には、タイ人特有の「宵越しの銭は持たない」気質があります。南国ゆえに食うに困って命を落とすことはなく、仏教国としての相互扶助も機能しているため、貯蓄圧力が日本ほど強くありません。「マイペンライ」に象徴される、細部やメンツに過度にこだわらない価値観も、消費の自由度を高めています。

③ リタイア

日本にない自由とのんびりした生活がタイにあり、タイにない規律と質の高さが日本にあります。両国はそれぞれ補完関係にあると言えます。現在タイには6万人の日本人が在住していますが、生きづらさを増す日本とタイの二拠点生活を選ぶ富裕層は、今後さらに増えていくと見ています。

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高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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公開日:2018年1月12日

2016年8月15日月曜日

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これまでのブログが、内容、読みやすさ、ともにパワーアップ移転しております!

・東南アジアのソーシャルメディア事情、ビジネス活用事例
・訪日観光インバウンド
・東南アジア進出

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2014年7月16日水曜日

アジア富裕層はビザなし訪日を可能にすべき——シンガポールから見た日本観光開国論

当記事の3行まとめ

1. アジア富裕層が求めているのは、お金では買えない本物の体験と安心・安全
2. 桜・温泉といった日本の無形観光資産は、韓国・台湾のPRに置き換えられつつある
3. 訪日客1000万人時代でも、シンガポールやマレーシアの観光客受入規模には大きく劣る

前提:大前研一氏のビザ撤廃提案に、現地からも賛成

大前研一氏が「アジア富裕層はビザなし訪日可能にすべき」と提案する記事を読みました(出典:NEWSポストセブン 2014年7月15日)。

シンガポールを拠点に、ASEAN・台湾・香港の訪日観光PRに携わる立場から、現地の実感を踏まえてもこの提案に大いに賛成します。以下、その理由を3つの論点から整理します。

① アジア富裕層が求めているのは、お金では買えない本物の体験と安心・安全

アジア富裕層がいま求めているものを整理すると、次の5点に集約されます。

・日本ビザ申請手続きが面倒で、それだけで気持ちが遠のいている
・ASEANの人々が「世界で最も観光したい国」として挙げるのは日本である
・富裕層は高い質の体験・サービス・商品、そして安心と安全を求めている
・富裕層に響きやすい高価値で文化的な観光コンテンツを、日本は保有・開発している
・日本は観光コストが高い国だが、富裕層は「お金はいくらかかっても良いから貴重な体験を」という発想で動く

要するに、アジア富裕層は「お金では買えない体験」を求めているのです。韓国・台湾・タイよりも表現しにくく、再現性の低い貴重な体験を提供できるのはどこか。歴史が長く、独自の文化を蓄積してきた日本に、その優位性があります。

② 富裕層には精神的に豊かになる体験を——シンガポール富裕層と高知の網引き漁

先日、シンガポールの富裕層20人を高知の網引き漁に案内した際、現地で漁を一緒にした老夫婦から後日ビデオレターが届き、シンガポール側の富裕層は感激してさらに別の富裕層を連れて再訪した、という出来事がありました。

ここで強調しておきたいのは、シンガポールの富裕層と中国の新興富裕層の違いです。シンガポールの富裕層の多くは、4〜5代続く華人の名家であり、欧米の大学院を修了した教養ある文化人層です。彼らが反応するのは、ブランド消費ではなく、地域に根ざした人との交流や、その土地の暮らしに触れる体験です。

③ 桜や温泉といった日本の無形観光資産は、韓国・台湾のPRに置き換えられつつある

近年、韓国は桜を、台湾は温泉を、ASEAN市場向け広告の中核に据えてPRを展開しています。日本が長年保有してきた無形観光資産が、韓国のもの・台湾のものとしてASEANで認識され始めているのが現状です。

訪日外国人は2013年にようやく1000万人を超えましたが、人口約560万人のシンガポールには年間1500万人、人口約2800万人のマレーシアには年間2500万人の外国人観光客が訪れています。日本は受入規模で大きく差をつけられており、抜本的な制度改革なしには、世界的な観光誘致競争でさらに後れを取る局面に入っています。

まとめ

お金が全てを測る物差しではありません。しかし、親日で、教養があり、日本の文化・歴史・季節・地域差の機微まで理解できるASEAN富裕層に対しては、日本の門戸をより大きく開いて良いのではないでしょうか。

ビザの簡素化は単なる手続きの問題ではなく、日本がアジア富裕層に対してどのような姿勢を示すかというメッセージそのものです。観光立国を掲げるのであれば、ターゲット層の実態に合わせた制度設計が問われています。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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・日本貿易振興機構(JETRO)国・地域別情報:https://www.jetro.go.jp/world/
・シンガポール政府観光局(Singapore Tourism Board):https://www.stb.gov.sg/
・マレーシア観光局(Tourism Malaysia):https://www.tourism.gov.my/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/

公開日:2014年7月16日

2014年5月7日水曜日

香港のソーシャルメディア事情——「香港でなくなった」香港で、SNSが消費の主戦場になっている

香港のソーシャルメディア事情——「香港でなくなった」香港で、SNSが消費の主戦場になっている

当記事の3行まとめ

1. 中国大陸化が進む香港では、若年層の不安と消費行動の変化が同時進行している
2. 香港人の日常はスマートフォンが中心で、Facebook・Instagram・LINEが主要チャネル
3. 飲食店から大手ブランドまで、香港マーケティングではSNS活用が前提条件になっている

前提:「香港でなくなった」香港——中国大陸化が進む中での消費社会の現在地

中国に返還されて以降、経済的に大陸化が進む香港では、街中で広東語よりも北京語を耳にする頻度が増え、中国人富裕層向けのブランド店が乱立しています。香港人自身が「香港は香港でなくなった」と語る局面に入っています。

仕事でもプライベートでも中国大陸との向き合いが避けられない中で、経済格差は拡大し、若年層は結婚に踏み切れず、押し寄せる大陸化への不安を抱えています。金融都市として発展してきた香港は、今や政治・経済・文化の各面で大陸の引力圏に取り込まれつつあるのが現実です。

この社会背景を踏まえた上で、香港人の消費行動とソーシャルメディア利用の特徴を3つの論点から整理します。

① 香港人の日常はスマートフォンが中心——「ショッピング」「食事」「おしゃべり」

札幌市と同程度の面積に約700万人が暮らす香港では、休日の過ごし方はコーズウェイベイ(Causeway Bay)でのショッピング、友人との食事、そしておしゃべりが中心です。離島のランタオ島やマカオへの小旅行が、たまの遠出にあたります。

このライフスタイルにおいて、スマートフォンは手足の延長のような存在になっています。欲しい服やガジェットの店舗評価、飲茶のメニューや店の口コミ、恋愛や仕事の愚痴まで、平日も休日もスマートフォン上の会話で日常が回っています。

香港人の海外旅行はWeb検索と自身の予約による個人旅行が主流で、人気の渡航先は上から順に台湾・韓国・日本・タイです。訪日リピート率の高さは、香港市場の最大の特徴の一つとして知られています。

② チャットアプリ・SNSの主戦場——LINE・WeChat・Instagramの使い分け

香港のスマートフォン普及率は世界最高水準で、地下鉄やトラムでも「歩きスマホ注意」のアナウンスが流れます。端末別では、iPhone、Samsung Galaxy、SonyのXperiaやSony Ericsson系Androidの順に人気があり、Sonyブランドは交通広告でも頻繁に見かけます。

チャットアプリの利用は、おおむね次の順で広がっています。

・スタンプ文化が定着しているLINE
・中国系利用者層が広く使うWeChat
・Facebookからの流れで使うFacebook Messenger
・英語圏定番でFacebook傘下のWhatsApp
・韓流とともに浸透したカカオトーク

英語・広東語・北京語を使い分ける香港人は、相手や話題に応じてアプリも複数使い分けるのが一般的です。「LINE使ってる?」は香港でも日常的な合言葉で、LINEブランドの限定IC(オクトパスカード)は売り切れになるほどの人気を集めています。

SNSではFacebookが定番で、総人口の約56%が利用(2014年3月時点で世界12位)。その上で、近年急速に伸びているのがInstagramです。投稿時にFacebookへの同時投稿が可能な点が支持されており、おいしい料理・おしゃれな服・気に入った店の写真を撮影して友人と共有する文化が定着しています。インドネシアにおけるPathのような位置づけと言えます。

③ 飲食店から大手ブランドまで——香港マーケティングはSNS活用が前提

香港で飲茶を食べる際、店の壁に注目してみてください。FacebookやInstagramのアカウント情報が掲載されている店が多いはずです。小規模な飲食店から認知度のあるブランドまで、香港マーケティングにおいてSNSはもはや必須インフラです。

香港人は常にスマートフォンで会話をしています。その会話の中に自然に入っていくのが、ソーシャルメディアマーケティングの基本姿勢です。押し売り型のPRではなく、消費者の意識のどこかに常に存在し続け、好意を保ち、必要なタイミングで選ばれる——この何年・何十年単位で続けたい消費者コミュニケーションのインフラとして、SNSが機能しています。

訪日インバウンドの文脈でも、香港FIT層へのアプローチではFacebookでの発信が欠かせません。英語と繁体字によるFacebookページとInstagramの併用が、香港人との距離を縮める基本構成になります。

まとめ

中国大陸化が進む香港社会では、香港人自身のアイデンティティと消費行動が同時に揺らいでいます。その中で、スマートフォンとSNSは生活の中心インフラとして機能しており、消費・コミュニケーション・観光行動のすべてがその上で展開されています。

訪日インバウンドにおいても、香港のリピーター層に届くチャネルはFacebookとInstagramが中心です。短期的なキャンペーンよりも、長期にわたる消費者との関係構築を前提に、英語と繁体字での継続的な発信を組み立てることが、香港市場で結果を出す王道です。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国、台湾・香港の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)香港地域情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/hk/
・香港政府観光局(Hong Kong Tourism Board):https://www.discoverhongkong.com/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/

公開日:2014年 5月17日

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