当記事の4行まとめ
1. マレー系とマレーシア華人は訪日動機・ハラル条件・購買行動が異なるため、設計を分ける必要がある
2. マレー系ムスリム旅行者にとってハラル対応は最重要条件
3. 大家族文化を背景に、年配者を含む団体ツアー需要が一定規模で残る
4. 若年層FITの訪日準備はスマートフォン上で完結する
前提:マレーシアは多民族国家であり、訪日層もマレー系と華人系の二層構造
マレーシアは多民族国家であり、訪日市場における2大セグメントは、イスラム教徒であるマレー系と、マレーシア華人です。両者は文化的背景・宗教条件・購買行動が大きく異なるため、シンガポール(FIT9割)やタイ(民族融和を経た自由な訪日形態)とは違い、セグメント別にアプローチを設計する必要があります。
マレー系は、ブミプトラ政策により最上位に位置づけられている民族で、生活面で優遇されています。法律上、マレー系はイスラム教徒であることが定められています。
一方、マレーシア華人は、4〜5世代前に主に中国大陸南部から移住してきた中華系の人々で、現地での土着化を経て、富とネットワークを持つ一族も多く存在します。
マレーシアは熱帯気候で日本のような四季がないため、春の桜・秋の紅葉・冬の雪に関するアクティビティ、および季節行事や風習への関心が共通して強いのが特徴です。訪日初回は東京・関西などのアクセスしやすい都市と日本文化体験から始まり、2回目以降に北海道・九州・ゴールデンルート、さらにその先で東北・四国などの地方へと周遊が進みます。
① マレー系とマレーシア華人の違いを理解する
マレー系訪日者は、ムスリムであるためハラル対応が前提条件となります。ただし、現時点では日本のハラル対応に過度な期待はせず、カップラーメンなどを一定量持参して自衛しながら訪日旅行を行っているのが実態です。日本側がこのギャップを埋められれば、マレー系市場は大きく伸びる余地があります。
マレーシア華人は宗教上の制約がない分、購買行動は同行する家族の楽しみ・嗜好・期待を満たすことが最優先になります。具体的には、孫がアニメ好きであれば聖地巡礼を組み込み、祖父への孝行旅行であれば祖父母が楽に楽しめる動線を最優先するなど、一族のピラミッド型家族構成に合わせて旅程が決まり、価格よりも体験の質が優先される傾向があります。
② マレー系ムスリム旅行者にとってハラル対応は最重要条件
マレー系ムスリムは、食事・礼拝・アルコール・観光地での配慮など、複数の条件をクリアできる旅程を求めます。日本側の現状はハラル対応が不十分であるため、訪日者は持ち込み食品で自衛している段階です。
逆に言えば、ハラル認証取得・礼拝スペース整備・ハラル対応レストランの動線への組み込みといった対応を進められた地域は、マレー系市場で先行優位を築けるということです。日本のハラル対応はまだ初期段階にあり、地方であっても参入障壁は高くありません。
③ 大家族文化を背景に、団体ツアー需要が一定規模で残る
マレーシアでは、年配者を含む3世代以上の大家族での訪日が珍しくありません。年配者の移動や海外での不便に対する不安があるため、GIT(団体ツアー)を得意とするクアラルンプールの中華系団体旅行会社に相談・参加するルートが定着しています。
ただし、富裕層はこのパターンに限らず、オリジナルツアーを手配して家族の希望を細部まで反映させる形を選びます。「団体ツアー=価格重視」ではなく、「団体ツアー=家族の安心と利便性重視」という前提で商品設計を考える必要があります。
④ 若年層FITの訪日準備はスマートフォン上で完結する
マレーシアは訪日ビザが解禁されているため、若年層はより安価な個人旅行を組みます。彼らの行動パターンは次の通りです。
・友人と日程を擦り合わせる
・その期間のAirAsia等LCCの価格をチェックし、まず航空券を確保する
・Facebookの口コミを参照しながら、興味を持った観光スポットをGoogleマイマップに登録していく
・マイマップ上で移動計画を組み立てる
訪日準備のすべてがスマートフォン上で完結する点が、マレーシア若年層FITの行動の特徴です。日本側の情報発信も、Facebook・Googleマップに対応した形でなければ選択肢に入りません。
まとめ
マレーシア訪日市場で押さえるべきは次の4点です。
・マレー系とマレーシア華人で動機・宗教条件・購買行動が異なる
・マレー系ムスリムにとってハラル対応は最重要条件
・大家族文化を背景に、団体ツアー需要が一定規模で残る
・若年層FITの訪日準備はスマートフォン上で完結する
シンガポール(FIT9割)やタイ(民族融和を経た自由な訪日)とは異なる、多民族国家マレーシアならではの訪日構造があります。セグメント別の設計を前提に取り組むことが、この市場で結果を出す出発点になります。
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この記事の著者
高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。
関連リンク
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お問い合わせ:info@asiaclick.jp
参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)マレーシア国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/my/
・マレーシア観光局(Tourism Malaysia):https://www.tourism.gov.my/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/
公開日:2018年1月16日
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