香港のソーシャルメディア事情——「香港でなくなった」香港で、SNSが消費の主戦場になっている
当記事の3行まとめ
1. 中国大陸化が進む香港では、若年層の不安と消費行動の変化が同時進行している
2. 香港人の日常はスマートフォンが中心で、Facebook・Instagram・LINEが主要チャネル
3. 飲食店から大手ブランドまで、香港マーケティングではSNS活用が前提条件になっている
前提:「香港でなくなった」香港——中国大陸化が進む中での消費社会の現在地
中国に返還されて以降、経済的に大陸化が進む香港では、街中で広東語よりも北京語を耳にする頻度が増え、中国人富裕層向けのブランド店が乱立しています。香港人自身が「香港は香港でなくなった」と語る局面に入っています。
仕事でもプライベートでも中国大陸との向き合いが避けられない中で、経済格差は拡大し、若年層は結婚に踏み切れず、押し寄せる大陸化への不安を抱えています。金融都市として発展してきた香港は、今や政治・経済・文化の各面で大陸の引力圏に取り込まれつつあるのが現実です。
この社会背景を踏まえた上で、香港人の消費行動とソーシャルメディア利用の特徴を3つの論点から整理します。
① 香港人の日常はスマートフォンが中心——「ショッピング」「食事」「おしゃべり」
札幌市と同程度の面積に約700万人が暮らす香港では、休日の過ごし方はコーズウェイベイ(Causeway Bay)でのショッピング、友人との食事、そしておしゃべりが中心です。離島のランタオ島やマカオへの小旅行が、たまの遠出にあたります。
このライフスタイルにおいて、スマートフォンは手足の延長のような存在になっています。欲しい服やガジェットの店舗評価、飲茶のメニューや店の口コミ、恋愛や仕事の愚痴まで、平日も休日もスマートフォン上の会話で日常が回っています。
香港人の海外旅行はWeb検索と自身の予約による個人旅行が主流で、人気の渡航先は上から順に台湾・韓国・日本・タイです。訪日リピート率の高さは、香港市場の最大の特徴の一つとして知られています。
② チャットアプリ・SNSの主戦場——LINE・WeChat・Instagramの使い分け
香港のスマートフォン普及率は世界最高水準で、地下鉄やトラムでも「歩きスマホ注意」のアナウンスが流れます。端末別では、iPhone、Samsung Galaxy、SonyのXperiaやSony Ericsson系Androidの順に人気があり、Sonyブランドは交通広告でも頻繁に見かけます。
チャットアプリの利用は、おおむね次の順で広がっています。
・スタンプ文化が定着しているLINE
・中国系利用者層が広く使うWeChat
・Facebookからの流れで使うFacebook Messenger
・英語圏定番でFacebook傘下のWhatsApp
・韓流とともに浸透したカカオトーク
英語・広東語・北京語を使い分ける香港人は、相手や話題に応じてアプリも複数使い分けるのが一般的です。「LINE使ってる?」は香港でも日常的な合言葉で、LINEブランドの限定IC(オクトパスカード)は売り切れになるほどの人気を集めています。
SNSではFacebookが定番で、総人口の約56%が利用(2014年3月時点で世界12位)。その上で、近年急速に伸びているのがInstagramです。投稿時にFacebookへの同時投稿が可能な点が支持されており、おいしい料理・おしゃれな服・気に入った店の写真を撮影して友人と共有する文化が定着しています。インドネシアにおけるPathのような位置づけと言えます。
③ 飲食店から大手ブランドまで——香港マーケティングはSNS活用が前提
香港で飲茶を食べる際、店の壁に注目してみてください。FacebookやInstagramのアカウント情報が掲載されている店が多いはずです。小規模な飲食店から認知度のあるブランドまで、香港マーケティングにおいてSNSはもはや必須インフラです。
香港人は常にスマートフォンで会話をしています。その会話の中に自然に入っていくのが、ソーシャルメディアマーケティングの基本姿勢です。押し売り型のPRではなく、消費者の意識のどこかに常に存在し続け、好意を保ち、必要なタイミングで選ばれる——この何年・何十年単位で続けたい消費者コミュニケーションのインフラとして、SNSが機能しています。
訪日インバウンドの文脈でも、香港FIT層へのアプローチではFacebookでの発信が欠かせません。英語と繁体字によるFacebookページとInstagramの併用が、香港人との距離を縮める基本構成になります。
まとめ
中国大陸化が進む香港社会では、香港人自身のアイデンティティと消費行動が同時に揺らいでいます。その中で、スマートフォンとSNSは生活の中心インフラとして機能しており、消費・コミュニケーション・観光行動のすべてがその上で展開されています。
訪日インバウンドにおいても、香港のリピーター層に届くチャネルはFacebookとInstagramが中心です。短期的なキャンペーンよりも、長期にわたる消費者との関係構築を前提に、英語と繁体字での継続的な発信を組み立てることが、香港市場で結果を出す王道です。
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この記事の著者
高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国、台湾・香港の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。
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参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)香港地域情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/hk/
・香港政府観光局(Hong Kong Tourism Board):https://www.discoverhongkong.com/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/
公開日:2014年 5月17日
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