2014年7月16日水曜日

アジア富裕層はビザなし訪日を可能にすべき——シンガポールから見た日本観光開国論

当記事の3行まとめ

1. アジア富裕層が求めているのは、お金では買えない本物の体験と安心・安全
2. 桜・温泉といった日本の無形観光資産は、韓国・台湾のPRに置き換えられつつある
3. 訪日客1000万人時代でも、シンガポールやマレーシアの観光客受入規模には大きく劣る

前提:大前研一氏のビザ撤廃提案に、現地からも賛成

大前研一氏が「アジア富裕層はビザなし訪日可能にすべき」と提案する記事を読みました(出典:NEWSポストセブン 2014年7月15日)。

シンガポールを拠点に、ASEAN・台湾・香港の訪日観光PRに携わる立場から、現地の実感を踏まえてもこの提案に大いに賛成します。以下、その理由を3つの論点から整理します。

① アジア富裕層が求めているのは、お金では買えない本物の体験と安心・安全

アジア富裕層がいま求めているものを整理すると、次の5点に集約されます。

・日本ビザ申請手続きが面倒で、それだけで気持ちが遠のいている
・ASEANの人々が「世界で最も観光したい国」として挙げるのは日本である
・富裕層は高い質の体験・サービス・商品、そして安心と安全を求めている
・富裕層に響きやすい高価値で文化的な観光コンテンツを、日本は保有・開発している
・日本は観光コストが高い国だが、富裕層は「お金はいくらかかっても良いから貴重な体験を」という発想で動く

要するに、アジア富裕層は「お金では買えない体験」を求めているのです。韓国・台湾・タイよりも表現しにくく、再現性の低い貴重な体験を提供できるのはどこか。歴史が長く、独自の文化を蓄積してきた日本に、その優位性があります。

② 富裕層には精神的に豊かになる体験を——シンガポール富裕層と高知の網引き漁

先日、シンガポールの富裕層20人を高知の網引き漁に案内した際、現地で漁を一緒にした老夫婦から後日ビデオレターが届き、シンガポール側の富裕層は感激してさらに別の富裕層を連れて再訪した、という出来事がありました。

ここで強調しておきたいのは、シンガポールの富裕層と中国の新興富裕層の違いです。シンガポールの富裕層の多くは、4〜5代続く華人の名家であり、欧米の大学院を修了した教養ある文化人層です。彼らが反応するのは、ブランド消費ではなく、地域に根ざした人との交流や、その土地の暮らしに触れる体験です。

③ 桜や温泉といった日本の無形観光資産は、韓国・台湾のPRに置き換えられつつある

近年、韓国は桜を、台湾は温泉を、ASEAN市場向け広告の中核に据えてPRを展開しています。日本が長年保有してきた無形観光資産が、韓国のもの・台湾のものとしてASEANで認識され始めているのが現状です。

訪日外国人は2013年にようやく1000万人を超えましたが、人口約560万人のシンガポールには年間1500万人、人口約2800万人のマレーシアには年間2500万人の外国人観光客が訪れています。日本は受入規模で大きく差をつけられており、抜本的な制度改革なしには、世界的な観光誘致競争でさらに後れを取る局面に入っています。

まとめ

お金が全てを測る物差しではありません。しかし、親日で、教養があり、日本の文化・歴史・季節・地域差の機微まで理解できるASEAN富裕層に対しては、日本の門戸をより大きく開いて良いのではないでしょうか。

ビザの簡素化は単なる手続きの問題ではなく、日本がアジア富裕層に対してどのような姿勢を示すかというメッセージそのものです。観光立国を掲げるのであれば、ターゲット層の実態に合わせた制度設計が問われています。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

関連リンク
公式サイト:https://asiaclick.jp
note:https://note.com/aseanmana
お問い合わせ:info@asiaclick.jp

参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)国・地域別情報:https://www.jetro.go.jp/world/
・シンガポール政府観光局(Singapore Tourism Board):https://www.stb.gov.sg/
・マレーシア観光局(Tourism Malaysia):https://www.tourism.gov.my/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/

公開日:2014年7月16日

2014年5月7日水曜日

香港のソーシャルメディア事情——「香港でなくなった」香港で、SNSが消費の主戦場になっている

香港のソーシャルメディア事情——「香港でなくなった」香港で、SNSが消費の主戦場になっている

当記事の3行まとめ

1. 中国大陸化が進む香港では、若年層の不安と消費行動の変化が同時進行している
2. 香港人の日常はスマートフォンが中心で、Facebook・Instagram・LINEが主要チャネル
3. 飲食店から大手ブランドまで、香港マーケティングではSNS活用が前提条件になっている

前提:「香港でなくなった」香港——中国大陸化が進む中での消費社会の現在地

中国に返還されて以降、経済的に大陸化が進む香港では、街中で広東語よりも北京語を耳にする頻度が増え、中国人富裕層向けのブランド店が乱立しています。香港人自身が「香港は香港でなくなった」と語る局面に入っています。

仕事でもプライベートでも中国大陸との向き合いが避けられない中で、経済格差は拡大し、若年層は結婚に踏み切れず、押し寄せる大陸化への不安を抱えています。金融都市として発展してきた香港は、今や政治・経済・文化の各面で大陸の引力圏に取り込まれつつあるのが現実です。

この社会背景を踏まえた上で、香港人の消費行動とソーシャルメディア利用の特徴を3つの論点から整理します。

① 香港人の日常はスマートフォンが中心——「ショッピング」「食事」「おしゃべり」

札幌市と同程度の面積に約700万人が暮らす香港では、休日の過ごし方はコーズウェイベイ(Causeway Bay)でのショッピング、友人との食事、そしておしゃべりが中心です。離島のランタオ島やマカオへの小旅行が、たまの遠出にあたります。

このライフスタイルにおいて、スマートフォンは手足の延長のような存在になっています。欲しい服やガジェットの店舗評価、飲茶のメニューや店の口コミ、恋愛や仕事の愚痴まで、平日も休日もスマートフォン上の会話で日常が回っています。

香港人の海外旅行はWeb検索と自身の予約による個人旅行が主流で、人気の渡航先は上から順に台湾・韓国・日本・タイです。訪日リピート率の高さは、香港市場の最大の特徴の一つとして知られています。

② チャットアプリ・SNSの主戦場——LINE・WeChat・Instagramの使い分け

香港のスマートフォン普及率は世界最高水準で、地下鉄やトラムでも「歩きスマホ注意」のアナウンスが流れます。端末別では、iPhone、Samsung Galaxy、SonyのXperiaやSony Ericsson系Androidの順に人気があり、Sonyブランドは交通広告でも頻繁に見かけます。

チャットアプリの利用は、おおむね次の順で広がっています。

・スタンプ文化が定着しているLINE
・中国系利用者層が広く使うWeChat
・Facebookからの流れで使うFacebook Messenger
・英語圏定番でFacebook傘下のWhatsApp
・韓流とともに浸透したカカオトーク

英語・広東語・北京語を使い分ける香港人は、相手や話題に応じてアプリも複数使い分けるのが一般的です。「LINE使ってる?」は香港でも日常的な合言葉で、LINEブランドの限定IC(オクトパスカード)は売り切れになるほどの人気を集めています。

SNSではFacebookが定番で、総人口の約56%が利用(2014年3月時点で世界12位)。その上で、近年急速に伸びているのがInstagramです。投稿時にFacebookへの同時投稿が可能な点が支持されており、おいしい料理・おしゃれな服・気に入った店の写真を撮影して友人と共有する文化が定着しています。インドネシアにおけるPathのような位置づけと言えます。

③ 飲食店から大手ブランドまで——香港マーケティングはSNS活用が前提

香港で飲茶を食べる際、店の壁に注目してみてください。FacebookやInstagramのアカウント情報が掲載されている店が多いはずです。小規模な飲食店から認知度のあるブランドまで、香港マーケティングにおいてSNSはもはや必須インフラです。

香港人は常にスマートフォンで会話をしています。その会話の中に自然に入っていくのが、ソーシャルメディアマーケティングの基本姿勢です。押し売り型のPRではなく、消費者の意識のどこかに常に存在し続け、好意を保ち、必要なタイミングで選ばれる——この何年・何十年単位で続けたい消費者コミュニケーションのインフラとして、SNSが機能しています。

訪日インバウンドの文脈でも、香港FIT層へのアプローチではFacebookでの発信が欠かせません。英語と繁体字によるFacebookページとInstagramの併用が、香港人との距離を縮める基本構成になります。

まとめ

中国大陸化が進む香港社会では、香港人自身のアイデンティティと消費行動が同時に揺らいでいます。その中で、スマートフォンとSNSは生活の中心インフラとして機能しており、消費・コミュニケーション・観光行動のすべてがその上で展開されています。

訪日インバウンドにおいても、香港のリピーター層に届くチャネルはFacebookとInstagramが中心です。短期的なキャンペーンよりも、長期にわたる消費者との関係構築を前提に、英語と繁体字での継続的な発信を組み立てることが、香港市場で結果を出す王道です。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国、台湾・香港の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)香港地域情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/hk/
・香港政府観光局(Hong Kong Tourism Board):https://www.discoverhongkong.com/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/

公開日:2014年 5月17日

2014年4月24日木曜日

ビザ免除ニュースで、インドネシア人観光客が知りたいことまとめ

Selamat siang, インドネシア人観光客担当のベルダです。
インドネシア人訪日観光ビザが解禁になるかもしれないニュースはインドネシア人の間でもニュースです。

去年からインドネシア人の友達から、日本旅行について質問が頻繁にきています。
考えてみたら、VISA免除じゃなくても、すでに日本に行きたいインドネシア人がたくさんいると思います。
問い合わせした友達は、結局ツアー団体に参加しないで、個人旅行、家族グループ(少人数)で行くケースが多いです。
旅行会社のツアーで行かないのでいろいろわからないので、私に聞いてきています。


インドネシア人からの訪日旅行についての質問でいちばん多いのは:

①宿泊 
安いホテルで泊まりたい。
②観光地について、 
花がたくさんあるところはどこ、
青森の温泉はよいのか?
TDL・TDS以外、東京都内にどんな遊ぶところありますか
札幌は何がある?など

③時期・季節について
なぜか「日本といえば寒い」という印象が強いのかな?
季節について何もわからない。一年中寒いの?
雪は何月?

④距離
1週間で足りる、このルート?大阪・京都・奈良・富士山・東京・北海度、
大阪から札幌まで何時間?

たくさんのメディアが日本に関する情報を発信していると思いますが、やはりまだGAPがあるようで、日本という国はただのジャワ島のようなものだと思っているかもしれません。

インドネシア人の友達は、日本についてとても深く興味を持っていますが、現地で流れている情報はバラバラでまとまらないですね。

例えば日本は寒い!という思い込み。たぶん富士山のせいです。富士山に雪がかかっているので、日本というイメージは寒いとインドネシア人が思っているかもしれません。



また、華人もイスラム教徒のプリブミの友達からの質問、食べ物に関して質問はまったくありませんでした。

食べ物について、そんなに気にならないそうです。
一番気になるのは、ホテル代です。

一人おおよそ一泊3000-5000円前後、もう少しアッパーミドルは一人10000円を超えないくらいが希望です。


(インドネシア担当/ベルダ)


2014年4月23日水曜日

お花見に行こう! 日本とは一味違う、台湾のお花見の楽しみの仕方とは?

哈囉(ハロー)!台湾担当のチャニンです!

最近、日本の桜もう咲いていますよね。皆様は友達とお花見に行きましたか?
チャニンの友達の中でお花見を見に日本へ行った方もたくさんいますね。

でも、実は台湾でも花を見られて、賞桜名所もありますよ。今回は台湾の人気お花見名所について話しましょう!


まずは台北の人気観光地―「陽明山」です。

毎年の2月下旬からの「陽明山花季」は台湾で一番人気なお花見場所です。
桜、ツツジ、椿、桃の花、ボタンなどを咲きまして、とてもきれいです。

それに、三月から野芋も採られます。陽明山の野芋は台湾のなかでも有数の美味しさなので、チャンスがあれば、是非やってみてください。
また、お花見以外に、台湾山野菜料理レストランもあって、温泉でも入られます。


次には、淡水に置く賞桜名所―「天元宮」です。

実際のところ、天元宮は道教のお寺ですが、1970年百名人以上の道士とボランティアが日本からの吉野桜と台湾原生桜を植えました。
数百枚の桜と中国ぽっいなお寺が入り交じた景色は想像より綺麗だし、台北市から一時間半の中で到着されるので、人気がとても盛り上がったです。

土.日曜になると、淡水MRT駅から天元宮までの乘車時間はもともとの15分から一時間以上にもなってしまいちょっと困りますが…。
私が大学生だったころは、四年間には毎年天元宮へお花見を見に行きました。


最後には、台湾人気観光地日月潭の近くに置く遊園地―「九族文化村」です。

日本さくらの会がさくら名所を選びまして、台湾第一多い桜を持って、夜でも桜をできます。
三月からはラベンダーも咲いていました。
ロープウェイに乗ると、有名な観光地・日月潭(台湾最大の淡水湖で、深緑色の湖は時間によってヒスイ色や紺碧に見えるんです)も行けられますよ。

いかがだったでしょうか?台湾の花見は、桜だけでなく他の春の花も一緒に愛でるのです。温泉地も近くにありますし。
特に、日本では北海道などで夏に咲くラベンダーが、こちらでは3月に咲いて桜と一緒に見られるので、日本の方にはちょっと珍しいかも!?
同じ植物でも、他の国で見るとまた違った楽しみ方ができるでしょう。

(アジアクリック・台湾担当/チャニン)

インドネシア訪日ビザ免除案——現地インドネシア人の声から見える期待と不安

インドネシア現地でも、訪日観光ビザ解禁のニュースにインドネシア人達は喜びのコメントを行っている

インドネシア訪日ビザ免除案——現地インドネシア人の声から見える期待と不安

当記事の3行まとめ

1. 2014年6月、インドネシア・ベトナム・フィリピンの訪日観光ビザ免除が政府の行動計画に盛り込まれる方向となった
2. インドネシア現地では喜びの声が多数だが、実現性への不安や否定的な意見も混在している
3. 1.5億人規模のインドネシア中間層を本格的に取り込むには、ハラル対応と双方向の情報交流の整備が前提

前提:タイ・マレーシアに続く東南アジア訪日ビザ解禁の流れ

2014年、タイとマレーシアの訪日ビザ解禁に続き、インドネシア・ベトナム・フィリピンの訪日観光ビザを免除する方向で、6月の「観光立国実現に向けた行動計画」に盛り込まれることとなりました。

すでにビザを解禁したタイからは前年対比219%、マレーシアからは165.5%の訪日客の伸びが報告されており(JNTO発表)、中国・韓国に偏らない親日国からの訪日層を厚くする政策として、日本側・東南アジア側双方にとって意義のある動きだと言えます。

私はちょうどインドネシアに滞在していたため、周囲のインドネシア人にビザ免除のニュースをどう受け止めたか直接聞きました。

① 現地インドネシア人の生の声——喜びと不安が混在

20代男性(ジョグジャカルタ):「これが本当だったら、本当に嬉しいよ!」

20代女性(ジャカルタ):「Yeaaay、どうかビザ免除になりますように」

20代女性(西ジャワ):「私の周りは、ビザ免除はデマのニュースだと言っている」

30代女性(ジャカルタ):「私はちょっと否定的。問題もあるし、マルチビザではどうかと思う。だけど、たくさんのインドネシア人に日本を見てほしい」

40代女性(東京在住、スラバヤ出身):「すでに何人かのインドネシア人から『フリービザは本当? 秋のツアーをアレンジしてね』と連絡が来ています」

喜びの声が中心ながら、実現性への懐疑や、観光客急増に伴う問題への懸念も同時に存在しているのが現地の実感です。

② Twitter上の反応——日本語ツイートも多く、世界2位の日本語学習者数を反映

Twitter上のインドネシア人の反応も同様の傾向が見られました。インドネシアは、中国に次ぐ世界第2位の日本語学習者数を持つ国であり、日本語によるツイートも一定数見られます。

全体としては喜びの声が多数を占めるものの、「本当にビザ免除が実現するのか」という不安の声も少なくありません。日本側からの情報発信が、現地で正確に届いていないことが背景にあると考えられます。

③ 1.5億人規模のインドネシア中間層を取り込むには——ハラル対応と情報交流の整備

現状、インドネシア人観光客の約9割は、キリスト教や仏教を信仰するインドネシア華人が占めています。これは、ハラル(イスラム法上許される)食事や礼拝環境が日本側で十分に整っていないことが、ムスリムであるマレー系インドネシア人の訪日を実質的に制限していることを示しています。

2020年にはインドネシアの中間層は1.5億人規模に達すると見込まれており、ビザ免除が実現すれば、訪日候補先として日本を選んでもらえる土壌は急速に拡大します。ただし、その需要を現実の訪日客数に結びつけるためには、次の2点の整備が前提条件になります。

・ハラル対応の体系的整備(食事・礼拝・観光施設の動線設計)
・日本側からインドネシアへの双方向の情報交流(正確な情報発信と現地ニーズの吸い上げ)

ビザ免除は入口の整備に過ぎず、その先の受入体制が伴わなければ、訪日体験の満足度低下とリピート率の低下を招きかねません。インドネシア華人層への訴求から一歩踏み込み、ムスリム層を含むインドネシア中間層全体を視野に入れた商品設計と環境整備が、これからの課題です。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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参考資料・関連情報
・日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・日本貿易振興機構(JETRO)インドネシア国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/
・在インドネシア日本国大使館:https://www.id.emb-japan.go.jp/
・インドネシア共和国観光省:https://www.kemenparekraf.go.id/
・パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/

公開日:2014年 4月23日

2014年4月22日火曜日

【トゥクトゥクも活用】東南アジアのスマートフォン位置情報コミュニケーション——日常からビジネスまで「チェックイン」が前提になっている

当記事の3行まとめ

1. ASEANではスマホとチャットアプリが、家族・友人・仕事のコミュニケーション基盤になっている
2. GPS位置情報を使った周辺ユーザー検索やチェックイン文化が、生活にもビジネスにも組み込まれている
3. 日本側がアジア市場でPRをするなら、Push型ではなくPull型の位置情報戦略が有効

前提:ASEANはPCを飛び越えてスマートフォン中心で発展している

「アジアではスマホ」という認識が、もはや当たり前のものとして定着しつつあります。経済発展の著しいASEAN諸国では、消費者はPC普及の段階を飛び越えて、スマートフォン上で情報交換を完結させています。

バンコクでも、ホーチミンでも、ジャカルタでも、大都市の人々は日本人以上にスマートフォンから手を離しません。背景には、東南アジアの大家族主義と口コミ重視の文化があり、家族・友人とのつながりを保つツールとしてチャットアプリが日常に深く組み込まれています。

しかも、ASEANではチャットアプリの複数同時利用が標準です。Facebook Messenger、LINE、WhatsApp、WeChatあたりはどの国でも標準で、インドネシアではこれにBBMが加わり、ベトナムではWeChatの代わりにZaloが使われます。日本のように「LINE一本」という単一アプリ型の市場とは前提が異なります。

① 「周辺ユーザー検索」は標準機能——日本との文化的ギャップ

東南アジアのチャットアプリでは、自分の周囲数百メートル以内にいるユーザーを検索する機能が標準的に提供されています。日本ではプライバシー・安全性の観点からこの機能が制限されている一方で、ASEAN市場では「自分の居場所を知人・友人とのやりとりに楽しんで使う」文化が定着しています。

日本人にとっては抵抗感のある「居場所の共有」が、東南アジアでは関係性を深める手段として機能しているという違いを、まず前提として押さえる必要があります。

② 「チェックイン」自体がコミュニケーション——ミャンマー・ヤンゴンの事例

ネット接続速度が遅いミャンマー・ヤンゴンの20〜30代ホワイトカラー層では、写真投稿が技術的に難しいため、レストランやランドマークへの「チェックイン」が日常のコミュニケーションの中心になっています。

「今どこにいるか」を投稿することで近況を共有し、その場所自体への評価も広がっていきます。これは個人の生活共有にとどまらず、店舗の評価が口コミとして拡散するビジネス情報の生成プロセスでもあります。インフラ制約の中で発達した独自のコミュニケーション様式と言えます。

③ 周辺の見込み客への営業ツールに——カンボジアの事例

位置情報をビジネスに応用している事例も、ASEANでは草の根レベルで観察できます。

私自身がカンボジアでホテル滞在中に、トゥクトゥク(3輪バイク)のドライバーから営業メッセージを受け取ったことがあります。彼は私が半径100メートル以内にいることをチャットアプリで把握した上で、アンコールワット周辺の観光地の写真を送り、音声メッセージで魅力を伝えながら営業をかけてきました。

1日の売上が1000円程度の零細個人事業主にとってさえ、スマートフォンとGPS位置情報付きチャットアプリは仕事獲得の武器になっています。バンコクのスクンビットでも、近くにいる人から接触メッセージが届く事例があります(性産業従事者からの営業を含む)。位置情報マーケティングは、ASEANではすでに生活レベルで実装されているのです。

④ ビジネスへの応用——Pull型で「今」役立つ情報を届ける

これだけ普及している位置情報機能を、企業や観光地が活用するための4つのポイントを整理します。

・FacebookページやGoogleマップ上で位置情報をオンにし、消費者がチェックインできる状態を整備する
・国とターゲット層に応じてチャットアプリを使い分ける(インドネシアならBBM、ベトナムならZaloなど)
・Push型のPRではなく、周囲の消費者側からアプローチを引き出すPull型設計に切り替える
・「今立ち寄りたくなる情報」「今すぐ使えるクーポン」など、即時性の高いコンテンツを用意する

自分のFacebookページのチェックイン数と評価の星数を確認するところから始めるのが現実的な第一歩です。

まとめ

ASEAN市場における位置情報コミュニケーションは、日常会話から個人事業者の営業活動まで、すでに生活インフラとして根づいています。日本国内の店舗や観光地のPRにも応用できる発想であり、東南アジア向けPR戦略を組む際には、チャットアプリの位置情報を前提とした設計に切り替えることが、現地の消費者行動と噛み合う近道になります。

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この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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2014年4月21日月曜日

ASEAN市民とソーシャルメディア——5つのショートストーリーで読み解くASEAN市場

当記事の3行まとめ
1. ASEAN市場は口コミ文化が深く根づいており、ソーシャルメディアが日常と社会のインフラになっている
2. 災害対応・LCCのキャンペーン・政治運動・市民ジャーナリズム・スポーツ応援まで、SNSは多面的に機能している
3. ASEAN市場参入の出発点は、ソーシャルメディアを通じて現地の人々と「会話」を始めることにある

前提:ASEANの口コミ文化と、スマートフォン時代の市民コミュニケーション
東南アジアは、伝統的に口コミ文化の地域です。冬のない温暖な気候の中、大家族で過ごしてきた歴史があり、欧米列強による植民地時代を生き抜くうえでも、頼れたのは大家族と友人を中心とした口頭ベースのコミュニケーションでした。
そして現在、ASEAN経済統合を目前に急速な経済成長を遂げる中、ASEAN市民の手にあるのはスマートフォンです。彼らと、そして彼らが形成する市場と対話するには、ソーシャルメディアの理解が欠かせません。
本記事では、ASEAN市場におけるSNSの位置づけを、5つのショートストーリーから読み解きます。

① 台風被害の中、SNSで助けあい・救助活動——フィリピン
2014年、フィリピンを台風ハイエン(Haiyan)が襲い、数千人の命が失われ、数百万人の生活に影響を与えました。インフラと地域社会が分断される中、Facebookを中心としたソーシャルメディアが、助けあいの基盤として機能しました。
具体的には、SNSに搭載されたGPS機能を活用し、Facebookグループ上で各自の所在を共有しあい、救助の手配や物資の融通が行われました。災害時のSNSは、もはや「情報共有」の枠を超え、人命に関わるインフラとして機能する段階に入っています。

② LCCの1日限定セールがクレーム対策にも——シンガポール、マレーシア他
ASEAN市場でも、消費者の関心を強く引くのはセールキャンペーンです。AirAsia、Jetstar、Tiger AirといったASEANベースのLCCは、1日限定セールを定期的に実施し、Twitterのハッシュタグキャンペーンで顧客との距離を縮めています。
格安チケット獲得の喜びがSNS上で拡散される一方、遅延や運航トラブルによる炎上も発生しやすい構造があります。安価なチケットへの期待と、運航品質への不満が、SNS上で同時に展開される市場特性を持っているのです。LCCのSNS活用は、攻め(販促)と守り(炎上対応)の両輪で成立しています。

③ スポーツの祭典を通じた民主化PR——ミャンマー
ミャンマーでは、2014年に開催されたASEANスポーツの祭典「SEA Games」に合わせて、軍事政権と長年対峙してきたアウンサンスーチー氏への支持と、「ビルマ」というブランドの再提示を、SNSを通じて発信する動きがありました。
ジャーナリストや旅行者を主な届け先として、ビルマの現状を国際的に伝える市民レベルの情報発信が、SNS上で展開されたのです。スポーツイベントを単なる競技の場としてではなく、政治的メッセージの発信機会として活用する事例として注目されました。

④ 「ニュースのニュース」——マレーシア、インドネシア他での市民ジャーナリズム
ASEANには、政府によって報道内容が操作されやすい国が複数存在します。マレーシアやインドネシアでは、政府発表のニュースに対する「ニュースのニュース」、すなわち報道の真偽を市民同士が検証・補足する機能として、SNSが活発に使われています。
市民レベルの情報共有に加え、Malaysian InsiderやThe Jakarta Globeのような民間メディアもSNSを積極的に活用しており、政府発表の一次情報と並行して、独立系メディアによる検証情報が同時に流通する構造が出来上がっています。
象徴的な事例として、マレーシア政府の不正選挙疑惑に対し、Facebookのプロフィール写真を黒一色にして抗議の意思を示す市民運動が広がりました。SNSは、政治的意思表示のチャネルとしても機能しているのです。

⑤ サッカーで互いの国を応援しあうASEAN市民
ASEANフットボールチャンピオンシップ(旧タイガーカップ)では、FacebookをはじめとするSNSを通じて、ASEAN各国の市民が互いの国を応援しあう光景が見られました。2015年のASEAN統合を控え、SNS上での国境を越えた交流が、新しい時代の絆の始まりを感じさせる事例となりました。
スポーツとSNSの組み合わせが、ASEANという地域意識を市民レベルで形成する装置として機能していることが見て取れます。

まとめ
ASEAN市民にとって、ソーシャルメディアは日常と社会の双方に深く組み込まれたインフラです。災害時の助けあい、LCC利用、政治的意思表示、市民ジャーナリズム、スポーツ応援——どの場面でもSNSが中核に位置しています。
東南アジア市場へのアプローチも、まずはソーシャルメディアを通じて現地の人々と「会話」を始めることから入るのが、最も自然で持続可能な入り口です。一方向の情報発信ではなく、双方向のコミュニケーションを前提とした設計が、ASEAN市場で長期的に支持される基盤になります。

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高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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