2013年11月21日木曜日

WeChatはボイコット、LINEも苦戦——ベトナム・ホーチミンのチャットアプリ事情

当記事の3行まとめ

  1. 領土問題を背景にした対中国感情の悪化により、ベトナムではWeChatがボイコットされ、韓国カカオトークもシェアを獲得できていない
  2. LINEは親日国ベトナムでも普及が進んでおらず、現地ではViber・WhatsAppが主流
  3. ベトナム独自のSNS付きチャットアプリ「Zalo」が、Facebookに似た使い勝手で急速に普及している

前提:国際関係がアプリ選択に直接影響するベトナム市場

これまでベトナムのスマートフォン事情、ソーシャルメディア事情について紹介してきました。今回は、ベトナム消費者の生活により近い、2つの主要チャットアプリを整理します。

ベトナムと中国の領土問題の影響で、ベトナム国内では対中国・対韓国感情が悪化しています。これにより、中国発のチャットアプリWeChatは市民レベルでボイコットされており、韓国発のカカオトークもシェアをほとんど獲得できていません。

ベトナム市場で特徴的なのは、消費者の商品選択に国際関係が直接的な影響を与えている点です。グローバルブランドであっても、出身国によって受容度が大きく変わるという、他国とは異なる市場構造を持っています。

① チャットアプリ市場は戦国時代——WeChatとLINEは苦戦

かつてはSkypeが人気だったベトナムですが、現在はID入力が不要で操作性の良い無料電話アプリViberが人気を集めています。

ベトナムは親日国の側面も持ちますが、Viberに加えて、後述する強力な現地アプリの存在もあり、LINEは現時点では大きな普及には至っていません。市場の主導権は、現地適応型のアプリと先行して定着したグローバルアプリに握られている状況です。

② ベトナムで支持される2大チャットアプリ

ベトナム市場で特に支持を集めているチャットアプリは、次の2つです。

WhatsApp——電話番号だけでセットアップが完結する、アジア全域で広く使われている老舗のチャットアプリです。SNS機能はないものの、軽快な動作とおしゃべりに集中できるシンプルな設計が特徴です。既読機能も備えています。

Zalo——ベトナム独自のSNS機能付きチャットアプリです。Facebookに非常によく似たユーザーインターフェースを持ち、ベトナム語版Facebookを使っているような感覚で利用できます。Facebookにはない機能として、WeChatに搭載されているような「周囲にいる人を探せる」機能も実装されています。現地適応とSNS統合の両立が、急速な普及につながっています。

両アプリとも無料でダウンロード可能で、WhatsAppでは既存の友人を自動検出でき、ZaloもFacebookアカウントでログインできます。ユーザーインターフェースの完成度が高く(Zaloはほぼ完全にFacebook型)、ストレスなく友人を増やし、日常的な情報交換ができる設計になっています。

③ ベトナム市場で増す、ソーシャルメディアの存在感

ベトナムでも、新聞やテレビといったオールドメディアの影響力と消費者の接触時間は、ソーシャルメディアの台頭によって急速に縮小しています。

インドネシアでBlackBerry MessengerのPINリストが企業の営業ツールとして広く使われ、中国でWeChatが企業活動の中核に組み込まれているのと同様に、ベトナム市場でも現地のSNSやチャットアプリを通じて消費者と接続することが、企業活動の前提になりつつあります。Zalo・WhatsApp・Viber・Facebookという現地で支持されるツールを通じて、ベトナム消費者を理解し、対話し、相互認知を深めながらブランドを構築していく——これがベトナム市場での長期的な勝ち筋です。

まとめ

ベトナムのチャットアプリ市場は、国際関係・現地適応・先行優位の3つの要素が複雑に絡み合った独自の構造を持っています。グローバルブランドの普及度が、その出身国とベトナムとの関係性に左右されるという特異性は、他のASEAN市場では見られない特徴です。

日本企業がベトナム市場でSNS・チャットを活用する際は、Zalo・WhatsApp・Viberの現地3アプリへの対応を起点とし、Facebook連携を強化する設計が現実的です。LINEに過度な期待を置かず、現地で実際に使われているプラットフォームに合わせた発信戦略を組むことが、ベトナム市場で結果を出す近道になります。


この記事の著者

高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。

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