当記事の3行まとめ
- 携帯電話普及率は10%程度、SIMカードは2〜4万円と高額で、通信インフラはまだ脆弱
- ビルマ語フォント対応の問題から、Samsung Galaxyが圧倒的に強い市場
- 政府主導の通信インフラ改善が進行中で、3年程度で劇的な普及が予想される
前提:ヤンゴンから見るミャンマー通信インフラの現在地
民主化が進み、経済が目に見えて急拡大するミャンマー(ビルマ)。最大の商業都市ヤンゴンから、現地の携帯電話事情と現地のソーシャルメディア事情を2回にわたって整理します。
ヤンゴンは人口約650万人。イギリス統治下のゴシック建築群が今なお残る歴史ある商業都市です。多くの企業が進出し、目に見えてインフラが整備されてきていますが、通信インフラはまだ強いとは言えない状況にあります。
① 携帯電話の普及率と価格構造
ミャンマーの携帯電話普及率は、10%程度と言われています。価格帯別のシェアは次のようになっています。
- 1万円以下:Huaweiが強い
- 1万円以上:Samsungが強い
- iPhone:7〜8万円程度の価格帯ながら、意外と所持者が多い
SIMカードは2〜4万円と高額で、これに加えて5,000チャットまたは10,000チャットの通信カードを購入することで、通話やインターネット接続が可能になります。
インターネット接続中の従量課金は、GSMで1分あたり2チャット、CDMA・WCDMAで4チャットが消費されていきます。注意すべき点として、操作していなくても接続中は2チャットずつ消費される仕組みのため、ネットを使わない時は接続をオフにしておく必要があります。動画や大きな画像を扱わなければ、数日間の利用は10,000チャット(約1,000円)のプリペイドカードで十分賄える計算です。
通信速度は30KB/s程度、WCDMA環境では500Kbps程度です。低速度ではあるものの、画像送受信を伴わないFacebookやチャット程度の用途には十分な水準です。比較的回線状況の良い午前中であれば、テザリング利用も実用に耐えます。一方で、午後から夜間にかけては断続的に切断が発生し、停電とともに通信インフラの脆弱さが顕在化します。
② 政府主導の通信改善——SIMカード低価格化の動き
近年、1,500チャット(約150円)でSIMカードを販売する動きが始まりました。これにミャンマー市民が殺到し、抽選で当選した人から役所で配布される形になっています。
ミャンマー政府はノルウェー企業などに通信インフラの改善を委託しており、今後3年程度で劇的な携帯電話普及(数千円のスマートフォンからGalaxy、iPhoneまで)が予想される局面に入っています。
③ ビルマ語非対応のiPhone、対応可能なSamsung Galaxy
Android OSもiOSも、標準ではビルマ語をサポートしていません。そのままの状態では、ビルマ語の入力も表示もできない状況です。
Samsung端末はOSにフォント追加が可能で、ビルマ語フォントを比較的簡単にインストールできます。これがミャンマー市場でSamsungが圧倒的優位を築いている最大の理由です。
他メーカーのAndroid端末はRoot化、iPhoneは脱獄が必要になります。ただし、ビルマ語専用ブラウザなどのアプリを使えば、そのアプリ内ではビルマ語表示が可能になります。Root化、脱獄、アプリインストール、フォントインストールといった作業は、現地の携帯ショップでサービスとして提供されています。
④ アプリ配信プラットフォームの状況
Google Playでは、ViberやLINEなどはミャンマーがサービス対象外の国に指定されており、公式ルートでのインストールができません。One Mobile Marketなどの非公式サイト経由でインストールするか、特殊な方法を使う必要があります。
iTunes Storeでは、ViberもLINEもインストール可能で、Viberはある程度のユーザー基盤が形成されています。LINEはほとんど浸透していません。
Google Playは2013年4月頃からミャンマーで利用可能になりましたが、無料アプリのみが対象です。iTunes Storeは2012年4月頃から有料アプリも含めて利用可能になりましたが、ミャンマーは公式サポート対象国ではないため、ミャンマーのアカウントは作成できません。アメリカ・日本・タイなどのiTunesカードを使ってアカウントを作成する必要があります。
また、ビルマ語フォント非対応端末向けの対応として、ビルマ語の文章を画像化してFacebookに投稿する習慣も広く根付いています。
まとめ
ミャンマーの携帯電話市場は、ビルマ語対応という言語要因がブランド選択を直接左右する、世界的にも珍しい市場特性を持っています。Samsung Galaxyの圧倒的シェアはマーケティングの結果ではなく、技術的な対応力の違いから生まれた現象です。
政府主導の通信インフラ改善が進行中で、SIMカード価格の低下と合わせて、今後数年で劇的な普及拡大が予想されます。ミャンマー市場への参入を検討する企業は、現時点での通信インフラの制約を踏まえつつ、近未来の普及拡大を見据えた中長期視点での戦略構築が求められます。
この記事の著者
高橋 学(たかはし まなぶ)
アジアクリック代表。タイ・バンコク在住。中国を含むアジアでの実務歴20年以上。日本語・英語・中国語・タイ語の4言語ビジネスレベル。東南アジア6カ国+インド+中国の現地ビジネス、訪日インバウンド、SNSマーケティングを専門とし、日本の自治体・観光団体・企業に対し、どの国に・どの順序で・どのように伝えるかの判断材料を提供している。
協力
ヤンゴン・後藤修身氏
関連リンク
公式サイト:https://asiaclick.jp
note:https://note.com/aseanmana
お問い合わせ:info@asiaclick.jp
参考資料・関連情報
- 日本貿易振興機構(JETRO)ミャンマー国情報:https://www.jetro.go.jp/world/asia/mm/
- 在ミャンマー日本国大使館:https://www.mm.emb-japan.go.jp/
- ミャンマー郵便電気通信省(Ministry of Transport and Communications):https://www.motc.gov.mm/
- パシフィック・アジア観光協会(PATA):https://www.pata.org/
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